One or All
朝、目が覚めたら、何か違和感がある。
なにやら、家族は忙しく朝食の準備をしているようだ。
そして気持ちのいい朝の日差しを避けるかのように、窓はカーテンが閉まっている。
食卓につくと、みんなは急いでご飯を口に運んでいる。
妻は私に対して早く朝食を済ますように急かす。
今日は何かが違う。
朝食が終わると、カーテンは開かれ、いつもと変わらない朝の風景が訪れた。
スーツに着替え、歯を磨き、家を出る。
しかし今朝感じた違和感は続いていた。
会社に到着し、仕事の準備をする。
そこに上司がやってきて、私に話しかけてきた。
「どうだい?最近いいSEXしてるかね?」
???
朝っぱらから卑猥な話をしてくるなんて。
しかもこんな公衆の面前で。
言葉を濁すと、上司は追い討ちをかけるように。
「ダメじゃないか。ちゃんとSEXしないと。」
そういえば周囲は全くといっていいほど反応がない。
まるでこれがありきたりの会話であるかのように。
何かがオカシイ。
昼食でも、朝のような光景が広っていた。
同僚は皆、そそくさと食事を済ませ、何事もなかったかのように仕事に戻る。
どうしたのだろう?
私が間違っているのか、私は明らかにマイノリティだ。
何が起こっているのだろうか…
これは、確か漫画「火の鳥」の中にあった話。
ある日突然人々の価値観が逆転している世界に来てしまう、という話だ。
食事が卑下されるべきモノとされ、SEXが公然と推奨される世界。
普通では考えられないことだけど、果たして本当にそうなのか。
話の中では、この後にこのような展開となる。
これはどうしたことか?と尋ねると、このような答えが返ってくる。
「人間という種を保存していくためにSEXするのは当然のことだろう。むしろ、自分の生命を維持するために他の動植物を殺していることのほうが軽蔑に値するんじゃないか?」
つまり、種の保存と個体保存、どちらが人間として尊重されるべきなのか、ということ。
人間以外の動物は、種の保存、進化の系譜を維持するために、個体保存をしている。
まぁ実際に動物はどう思ってるのか知らないが。
人間は、個体保存の中に、個人の欲求や嗜好を見出し、それを満たすために日々生活している。
SEXももう殆ど個人の欲求を満たす一つの手段となっている。
子孫を残すという場合においても、種の保存というより、個人的に子供が欲しい、立派になってほしいということが前提となっているのではないか。
その点では既に人間は動物という領域を逸脱しているのかもしれない。
現在世界の総人口が増える中で、日本の人口増加率は確か2007年あたりからマイナスになると予測されている。
増えすぎた人間は、もはや「種」という概念がなくなっているのだろうな。
個体保存の中でどれだけ個人が満足できるのか、今となってはそれが重要。
ま、どーせ俺もそうなんだけどさ。
ただ、人口の増加も減少も、ひとつ考えてみる余地はあるんじゃないかな。