
*
以前、とある経済誌を読んでいて、
そこそこ有名な経済ジャーナリストが寄稿した
『あなたの代わりならいくらでもいる。』
と題されたコラムに、私は少しばかり違和感を覚えた。
あなたは、どう思われますか?
下記の、その全文を載せますので、お読みになってください。
(長文にて、ごめんなさい。)
#
『あなたの代わりならいくらでもいる。』
そんな言葉を上司から投げられた人はいるだろうか。
失敗をなじられた時? クビを宣告された時? 叱咤激励のつもり?
かけられた側はかなり傷つく。
「上司が部下に言ってはいけない言葉ベスト10」に入りそうな言葉だ。
*
「替わり」の効かない仕事といえば、どんな仕事を思いつくだろうか。
歴史上の人物の成し遂げた仕事からはたくさん挙げられるだろう。
あなたならどの仕事を挙げるだろうか。
スポーツ選手にも伝説の仕事をした人は少なくない。
*
先週、心臓外科の権威、須磨久善さんにお会いした。
日本初のバチスタ手術を成功させ、世界初の手術法を
いくつも確立しながら、何千人もの命を救ってきた人だ
(ドラマ『医龍』や映画『チーム・バチスタの栄光』の
医事監修としても知られる)。
須磨さんの仕事も「替わり」の効かない仕事だろう。
*
サッカーの日本代表で次の試合のメンバーが発表される度に、
何人かが入れ替わる。今回新たに招集された
平山選手や小笠原選手の陰で呼ばれなかった選手がいる。
彼らは予め分かっていても、自分の“替わり”がいることを
思い知らされただろう。
欧州組が入れば、この二人だってどうなるかわからない。
日本中から集められた精鋭の世界でさえ、「替わり」はいる。
*
冷静に考えれば、世の中には
「替わり」の効かない仕事をしている人など
殆どいないことに気がつく。
「あなたの代わりならいくらでもいる」のだ。
---
*
読み終わった直後は、人権を無視した暴言だと、怒りの余り、
その雑誌を、その辺りの壁に投げつけたくなる衝動に、私は駆られた。
でも、たしかに世の中には、
経営者と、雇われて金銭の対価として働く従業員の、
決して相容れないの二派がある。経営者は会社の継続とさらなる繁栄、
そして株式会社なら、株主様を大切にすることが、第一義である。
時に、人材の扱いで、非情な判断を下すことも求められるだろう。
そもそも会社が無くなれば、
従業員とその家族を路頭に迷わしてしまうというある種の責任感も
経営者側にはあるかもしれない。(……と望みたい。)
*
そのコラムは、読み手が、経営者か従業員かの立ち位置の違いで、
共感したり、逆に反発を覚える。
おそらく、人生ゲームというものが実際に存在するとすれば、
経営者と従業員とでは、最初から違うルールでプレイされるのだろう。
*
けれど、それでも私は、お金よりも大切なはずの
『個人の自由と権利(=命)』に掛けて、この論説に反対したい。
たとえ、お金のために、あなたの時間、そして労働としての
汗と涙を捧げたとしても、心までは売ってはイケない。
資本主義の原則としては、間違っているかもしれないけれど、
でも、敢えて私は言いたい。
「ご自分を大切になさって。あなたの代わりはいないのよ。」って。
*
ところで、あなたは、ドラッカー著の『マネジメント』を
お読みになったことがおありですか。
『あなたの代わりはいくらでもいる。』という組織の有り様が、
正しくないことを学べるはずです。
ぜひに、ご一読をオススメします。
もう一度、言いますね。
「ご自分を大切になさって。あなたの代わりはいないのよ。」
今日も、よい一日になりますように。
(ende.)
