Ms.Violinistのひとりごと-小杉武久 電子音楽の雑音
(2009年(平成21年)6月17日:毎日新聞(夕刊))
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小杉武久先生は1960年代、ニューヨークの実験集団
フルクサスに参加して以来、一貫して電子発振器を使う
パフォーマンスを展開してきた。

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発振器の音は蛍光灯のプーンや、中短波ラジオのザーと同じ。
演奏者が小型マイクで床や貝殻や糸に触れると、
衝撃や摩擦の音が拡大される。
いずれも単調な「雑音」だが、変調器や反復回路を通し、
複数のスピーカーから流すことで、表情と空間性がつく。
複数の音源の間で干渉が起きる。

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自転車に発振器をつけて走らせたり、光センサーで音と光と
動作の関連を作り出した曲もある。
楽器も声も電子回路に入れる素材にすぎず、
高橋悠治の見事なシューマンも、ヤマタカEYEの
力強いアラブ歌謡風の声も、電子音の大鍋の中に、
渦巻きながら溶けていく。

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普通に考えればどれも匿名的な雑音だ。
それなのに最初の瞬間に「さすが、年季が入っている」と感じた。
「電流は第2の自然」という信念を固持し、50年前のハイテクで、
命の流れる音を追求してきた人にしか作れない。
小杉先生が手作り機材のつまみを忙しそうに回すと、
鉱石ラジオ、アナログ盤の味わいを持った豊かな倍音が広がる。
音の雲が現れては消える。

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アナログ機材は動作が不安定で、
昔、数分間無音が続いたことがあったそうだ。
その制御できぬところが捨てがたい。
逆にデジタル音響は粒子が粗っぼくニュアンスに乏しい。
電子レンジで炭火焼きの香ばしい焦げ目を出せないのと同じだ。

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「炭焼きの香ばしい焦げ目」。
私、焼き鳥は「つくね」が大好きですね。
甘辛のお醤油ベースのこっくりとしたタレが美味しい。
それになんとなく、ハンバーグっぽいではないですか。(笑)
(ende.)

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Special Thanks:Ms.Violinist.
 The author is "Ms.Composer."
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