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昨年は、日本人科学者がノーベル賞を受賞しました。
これを切っ掛けに、
「子どもの科学離れに歯止めがかかる」という声があります。
でも「子どもが科学に興味を持つ」が速攻で「技術大国の復活」
という単純な図式は、ちょっと短絡的過ぎるのではないかしら。
子どもをまきこんだ大ブームは、
社会人として活躍する時期に、成果があらわれる。
いま10歳の子どもが30歳、40歳になる頃、
ようやく社会に大きな影響を及ぼす。
ブームとは、石油や石炭のような『化石燃料』のようなもの
と言えるかもしれない。
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昨今のノーベル賞日本人受賞ラッシュは、
概ね60歳代以上の科学者が中心。
彼らが業績を残したのは今から30年以上も前の話なんです。
彼らの子ども時代は、戦後の高度成長期。
『科学は人類を幸せにする、日本を豊かにする!』
と信じられていた時代。
SF小説や手塚治虫先生がブームで、子どもたちの将来の夢は
科学者だった。数学や物理、化学ができる子は理系に進む。
会社といえば、製造業という時代。大企業に行けなくても、
製造業で「国作り」そのものに参加できる。
子ども達の目の前は、夢や希望が山盛りだった。
つまり、理系を目指す子どもが大量にいて、競争原理が働き、
優秀な科学者が生まれ、世界に誇れる成果が生まれてゆく。
「教育カリキュラム」の良し悪しに原因を求めるのではなく、
統計学的に、単に「母集団が大きかった」といえなくもない。
それが、かつての技術大国日本の正体に思えてきた。
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さて、子どもたちのブームは
良いことばかりを引き起こすわけではない。
科学ブームで成長した子どもたちは、後に公害や環境汚染に
鈍感な大人たちを作り出した。
また、机上の空論や書類上の数字には強い関心を持つが、
人間同士のコミュニケーションがまったくとれず、
社会からドロップアウトする、いわゆる「頭でっかち」な
『子ども大人』も大量生産してしまった。
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子どもたちを巻き込むブーム。
その成果は、彼らが成長するまでは分からない。
だから、科学だ技術だと先走って大人達が騒ぐ前に、
まずは「大人の仕事は面白い」という良いイメージが
子ども達に伝わるぐらいで十分でないのかしら。
芸術家も科学者も、「促成栽培」は出来ないのよ。
(ende.)