Ms.Violinistのひとりごと-大阪センチュリー交響楽団 ショスタ1905
*
指揮者の沼尻竜典から楽器の変更が提案されたのは、
演奏会前日の夕方だった。「演奏に使うチャイムを
2台に増やしてパイプオルガンの横に配置したい」。
音楽家の要望に臨機応変に対応し、最善のステージを
務めてもらうために現場を仕切るのがステージマネジャーだ。

*
大阪センチュリー交響楽団定期演奏会。
プログラムはグリーグのピアノ協奏曲と
ショスタコービチの交響曲第11番「1905年」。
チャイムは「1905」の最後に鳴り響く。
帝政ロシア時代、皇宮に請願行進をしていた民衆に
向かって当局が発砲し、多数の犠牲者が出た
「血の日曜日事件」を描写した息詰まる音楽だ。

*
用意していたチャイムは1台。
ステージマネジヤーの山口明洋が走る。もう1台の楽器と奏者、
しかもこの曲の演奏経験がある奏者が見つかるか。
ホール正面の高い位置にあるオルガンの両脇で演奏できるか。
やがて楽員が個人所有するチャイムがあると分かり、
京都市交響楽団の楽員が演奏を承諾してくれた。

*
開演6時間前。山口はトラックに積んできた楽器や楽譜を搬入し、
舞台づくりを開始。
自ら書いた配置図に沿ってホールスタッフとの
チームワークでひな壇をつくり、椅子や譜面台を並べる。
山口は全員の椅子の高さや背もたれの角度の好みを記憶しており、
すべての椅子に座って確認。
最後にチャイム2台をオルガン横に運び上げ、約80分で完了した。

*
「1905年」の演奏は演奏会の最後。
鬼気迫る打楽器群の連打に壮絶な現場が眼前に浮かぶ。
演奏開始から60分、チャイムに照明が当たり、音が響く中で
沼尻がタクトを下ろした。
「チャイムは舞台上だと聴こえにくい。2台にして教会の鐘が
上から降り注ぐようにした」と沼尻。
狙いは的中。緊張感あふれる熱演と劇的なラストに拍手が続いた。

*
「どんな要望にも不可能とは言いたくない。熱い拍手で
指揮者と楽員がいい顔で舞台袖に戻ってくるのを迎える。
ステマネは幸せな仕事です」と山口は語る。
(ende.)

#
Special Thanks:Ms.Violinist.
 The author is "Ms.Composer."
 The verification is "Ms.Composer."

人気ブログランキングへ