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祭りの太鼓が聞こえてきたら、
体がうずうずするのは万国共通、人間の習性。
メロディーよりもハ―モニーよりも、
人間の血を騒がせるのはやっぱりリズム!

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2010年9月25日、大阪・ザ・フェニックスホールに
サンバのリズムが響いた。
ホイッスルを首から下げ、プラジルのタンバリン
「バンデイロ」を鳴らして雄たけびを上げるのは、
大阪・阿倍野出身の中村功先生(52)。
ドイツ・カールスルーエ国立音楽大学教授で、
ヨーロッパで信頼と評価の高い打楽器奏者だ。

今年から同ホールで始まった「パーカッション・トゥデイ」は、
中村と仲間たちが民族音楽から現代音楽まで
世界の打楽器の魅力を伝えるコンサート。太鼓、ティンパニ、
シンバルだけじゃない打楽器の未知との遭遇ができる。

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例えばこの日演奏されたベルギーのティエリー・ディ・メイ作曲
「机の音楽」は、文字通り机が楽器。
3人の奏者が木製の机の前に座り、グーやパー、空手チョップと
形を変えながら、たたいたり擦ったりして複雑なリズムを刻む。
耳を澄ませば、手の形や体格によっても
響きが変わることに気づく。

楽譜をめくる動作も芝居がかったパフォーマンスになっていて、
おかしい。その机も手作りの品。
「実は用意していた机があまりいい音じゃなくて、
演奏会前にホームセンターに探しに行きました。
必要な長さに加工して、材料費は5,000円くらい。
ホームセンターにはバチを持ってよく行くんです。
いい響きのモノを探しに」

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聴衆が面食らった曲が、リビングルームにあるモノを楽器にした
米国の巨匠ジョン・ケージの「居間の音楽」。
舞台上にはソファ、照明、時計、雑誌が置かれ、奏者たちの
リズミカルなせりふまで音楽になっているユニークな作品。

「ケージが亡くなる2ヵ月前、『イサオの音はきれい。
イサオは自分の音が好きだろ』と言われて、自分が好きな音って
何だろうと考えるようになりました。
以来自分の好きな音を追い求めています。人生を変えた一言でした」

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そんな中村先生の音楽の原点は、阿倍野の祭りばやし。
少年時代、どうしても枕太鼓がたたきたくて、まとめ役の大人に
直談判した。東京芸大進学後はサンバに夢中になり、
ドイツに留学して現代音楽畑を突き進んだ。

「僕の先生は木なんです。木は太陽に向かって伸びて、
土の下では地球の真ん中に向かって根を伸ばす。
上半身だけ使う打楽器奏者が多いけど、本当のリズム感は出ない。
上に向かうエネルギーと下に向かうエネルギーを使い分けて、
どっしりした音楽も、跳ねる音楽もできなくては」

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うねるリズムに誘われて、アンコールは客総立ちで手拍子、
足踏みのお祭り騒ぎ。現代音楽の食わず嫌いはもったいない。
ぜひ一度ライブで体感を。

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画像は、ジョン・ケージ「居間の音楽」
Oberlin Percussion Group plays
John Cage's Living Room Music です。
(ende.)

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Special Thanks:Ms.Violinist.
 The author is "Ms.Composer."
 The verification is "Ms.Composer."

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