
(2010年(平成22年)11月5日(金):毎日新聞(朝刊))
「ナベサダとピアノで共演する政治学者」
ジェラルド・カーティス氏(70)
*
鍵盤の上で指が躍る。柔らかな音色が空気を震わすと、
心地よい時間が立ち上がる。
政治学者ではない、ピアニストの顔がそこにある。
「ナベサダ」こと、日本を代表するジャズの大御所、
渡辺貞夫さんと出会ったのは今年春。
その日のうちにサックスとピアノで演奏し、すっかり意気投合。
「テストに受かったんでしょうね」。
*
渡辺さんの勧めもあり11月20日、「新宿ピットイン」で
「ジェリー・カーティストリオ」としてデビューする。
70歳にして日本でプロのジャズメンになる。
特別ゲストはもちろんナベサダ。脇は中村健吾さん(ベース)、
大坂昌彦さん(ドラム)という豪華メンバーだ。
*
10代でピアノにはまり、大学生のころはリゾート地のホテルで
専属ピアニストとして稼いでいた。
いつしか日本政治の研究者に。
ニューヨークの自宅のビアノは「暇つぶし」に触る程度だったが、
数年前、「自分の音が突然、嫌になった。それから本格的に
レッスンを受けたり、音楽理論を学んだり」。
ナベサダとめぐり合う"音の糸"が途切れずに
奏でられていたかのようだ。
*
本番を前に、スタンダード曲を中心に毎日ピアノに向かう。
本業に影響は?
「1日は24時間ある。それに政治家に危機意識がなく、
のんきにやっているので……。残念だけど」。
一夜だけのライブ。
「緊張もあるが、自分の中にある音をシンプルに出したい。
どう展開するか、僕にも分からない」。
*
音楽は何歳になっても、楽しみ演奏できるというステキなお話。
新宿ピットインのチケットは即日完売とのこと。
でも、「政治家に危機意識がなく、のんきにやっているので……。」
というのはねぇ。。。
(ende.)
