Ms.Violinistのひとりごと-007 私を愛したスパイ DVD
(2010年(平成22年)11月1日(月):毎日新聞(朝刊))
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新聞を読んでいると、最近やたら「戦略」という言葉が
目立つように感じる。
その大半は、「日本の対中外交には戦略がない」というふうに
批判的な使い回しだ。

世の中が行き詰まり、戦略に活路を見いだそうと
しているのだろう。
しかし、何をもって戦略とするのか、
その定義となると意外に難しいのでは。

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先日、まさに「戦略××長」という肩書を持つ英政府幹部と
食事したときのこと。
英国というと「スパイの国」で、戦略にたけたイメージが強いが、
この幹部はあっけらかんと言ってのけた。
「議会の委員会が今、各省の戦略を調査しているのだが、
それ(戦略)がないのが問題だ。でも、先進国ならどこでも
『豊かで安全』であること以外に、戦略なんてあるのかね」

誇張した発言ではある。しかし、社会が複雑化し、
その変化の数ピードが加速度的に増す中、
大英帝国の末裔たちにとっても「正しい戦略」を練ることは
悩みの種であるようだ。
そして、彼は意味深長にこうも言った。
「真に重要な戦略があれば、そんなものは明かしたりはしない」

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では戦略とは何なのか。
専門家に聞いても、歯切れの良い回答はなかなか返ってこない。
意味が拡散しているのかも。
そんな中で、米国防大学の教授から受けた次の説明はピンときた。
「まず目標を定める。
そして利用可能な手持ちの資源を見定める。その限られた資源で
いかに目標を達成するかを示すことが戦略である」

戦略は大切だと思う。
ただ、この言葉は聞こえが良い分、使われ方次第で怪しげにも響く。
政府の国家戦略室がいい例だろう。
何か賢そうで、問題克服への期待(幻想?)は抱かせるが、
何を使命とするのかさえ二転三転しているのだから。

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つまり「戦略」という言葉を出すことで
「こんなに考えてます。頑張っているんですよ!」と言いたいのね。
でも、手元にあるのは「戦略」って刻まれたハンコなのかも。
政治にこそは、有言実行を求めたいです。

「言葉遊び」でないことを「行動」で示してほしいと思います。
(ende.)

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