
(2010年(平成22年)10月13日:毎日新聞(朝刊))
沖縄でのこと。
「軍用地買い取ります」などという広告が載っている
琉球新報の1面を見ながらふと気づいた。
天気図が、見慣れた東京の新聞より南西にずれ、
マニラのあたりまでカバーしている。
地元紙が沖縄を真ん中に持ってくるのは当然だ。
東シナ海の島にいることを、改めて実感した。
大学の講義で先生は初っぱなから、
「頭の中の地図を捨てなさい」と言った。
義務教育で使う地図帳の最初のページにあるような、
真っ赤な日本が世界の真ん中にある地図ばかり
思い浮かべていてはダメだ、と。地図はものの見方の表れ。
自分のテーマに合わせていろんな地図が必要なのだろう。
学生の私は「自分の国を真ん中に置いて考えてなぜ悪い…」と
ブツクサつぶやいたものだった。
国境の島・対馬(長崎県)。
陸上自衛隊対馬警備隊の隊長室には韓国側から見た
日本列島の地図がでかでかと張ってあるという。
向こうからすれば、北海道から沖縄の島々まで、
長く延びる日本列島は何と目障りなことか。
2010年版防衛白書にもやはり、列島をくるりと180度回転させて
中国からみた地図が載っている。中国海軍が日本の海峡や島々を
すり抜けて太平洋に進出している状況を説明するために。
尖閣諸島での事件も、あの地図で考えた方がわかりやすい。
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普天間問題にしても、尖閣問題にしても、
東京で考えている私たちは、東京中心の地図のままで
考えていないか。すると心理的にはどうしても、
「隅っこ」の出来事を過小評価してしまう。
沖縄の人たちはそのことを怒っているのかもしれない。
沖縄を真ん中に持ってきて考えたことはあるのか、地図を動かせと。
那覇からみたら、「隅っこ」の東京は遠い。
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最近、英語を社内の公用語にすると宣言した企業が現れた。
それにかつては、「国際化」「グローバル化」というコトバが
メディアに乗って私たちの耳に届いていた。
あなたは覚えていらっしゃいますか?
そして、来年度から小学校での英語教育が必修化されるらしい。
でも、私たちの意識の中の地図は相変わらず「日本が真ん中」のまま。
英語を学ぶ前に、考えなければイケないことがあると私は思うの。
あなたは、どう思いますか。
(ende.)
