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インタビューの場所にあった1台のピアノ。
「ちょっと弾いてくれませんか」と言うと
ピアノいすに座り、黙って宙を見つめること15秒。
何かが降りてきたみたいに顔つきが変わって、
いきなリライプが始まった。
高速道路をガンガンかっ飛ばすような速弾き、
足をダンダン踏み鳴らしてダンス、鼻歌も絶好調。
5分、いや10分たっただろうか、頭の中の楽譜が終わると、
素に戻って「えヘヘ」と笑った。
本番のステージじゃないのに、鍵盤に触れるとスイッチがオン。
体中からあふれ出す音楽。
こんな調子でいつもスカッと爽快、疾走する上原ひろみさま。
この秋はニューヨーク・ブルーノートで1週間のライブ、
先週はスイスとイタリアで弾いた。
1年中世界を旅してライブで勝負するパワフルな女性。
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ご出身は浜松市。6歳でピアノを始めると、日記代わりに曲を作る。
小学2年生で飼育当番をして書いた曲は「空を飛びたいニワトリ」。
「身近な鳥の中で唯一飛ベないニワトリの哀愁を書いたんです」。
進学した高校のロビーにはピアノがあり、授業でしかられた後は
先生への怒りをピアノで表現し、面白い先生が廊下を通ると
テーマ曲を即興演奏した。
「言葉よりも音にした方が伝わりやすかったんです。
人間国宝みたいな人がしゃべれば違うと思うけど、
私の言葉はずどーんと胸に届かない。音だったら
聴いている人の毛穴に入っていく感じがするんですよ。
耳は手段でしかなくなって心で感じる。それが音楽」

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心が震えると音が浮かぶ。
何も人生の一大事の瞬間ばかりではない。
まるでプログ感覚で曲がつづられるのが、
昨年のアルバム「プレイス・トゥ・ビー」。
シュークリームを買いに行ったのになくて、
店をはしごしてやっと食べられた喜びから、
食べ終わった寂しさを表現したピアノ曲
「シュー・ア・ラ・クレーム」。
「それは曲にしなくても、というのを曲にするところは
昔からちっとも変わらない。基本、いたずらの連続です」。
同じアルバムにピアノの弦の上に金属定規を置いて。
チェンバロのような音色に変えて弾いた曲もあった。
これも小さいころのいたずら弾きで発見した技だとか。
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「今まで楽しいな、楽しいなでピアノをやってきました。
ずっと夢だったのは、自分の作った曲をオーケストラと
演奏すること。去年それが実現したけど一晩だけ。
今年もう一度できることになり、やったーという感じです」
とガッツポーズの上原さま。
大阪だけで実現するオーケストラとのライブは12月14日、
ザ・シンフォニーホールで大阪センチュリー交響楽団と。
興奮のあまり、いすにほとんど座らず中腰になって
一心不乱に弾く姿が見られるはず。
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私、この方の音楽を聴くと感激して涙が出そうになる。
「そう! 音楽って楽しくなくっちゃね!」
心臓バクバクの私。この思いが心の中で踊ってるの。(^^)
今、私はモーレツに感動している!!
(ende.)
