
(2010年(平成22年)9月15日(水):毎日新聞(夕刊))
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この間までの厳しい残暑が明けて、
ようやく秋が来たと思う間もなく、師走の風物詩「第九」の
コンサート準備はもう始まっていた。
先月末、歌手の平原綾香さまが佐渡裕指揮のコンサートを
聴くために、兵庫県立芸術文化センターを訪れた。
佐渡先生が総監督・指揮を務める恒例イベント
「サントリー1万人の第九」に今年、ゲスト出演するためだ。
ベートーベンの「交響曲第9番」といえば第4楽章の「歓喜の歌」が
有名だが、あの大合唱が登場するのは曲の始まりから約50分後。
それまで音楽はオーケストラだけで進行する。
今回、平原さまは第3楽章の旋律をピックアップして
詞をつけ「一万人の第九」の場で初めて歌唱披露することを
計画しているという。
提案したのは佐渡さま。
「第九といえば歓喜の歌だけど、ベートーベンの
メロディーメーカーぶりが最も発障されでいるのが第3楽章だと思う。
第九の演奏会に来た人は第3楽章で寝てることが多いんですけど。
ベートーベンが愛を歌っているのが第3楽章。
平原さんにぜひ歌ってほしいとリクエストしました」。

これに対して、「絶対やらなくてはと思った」という平原さま。
「第3楽章は祈りのようなメロディー。
デビュー曲の『ジュピター』でも母の愛や普遍的な愛を歌ったが、
大きな愛を歌うことは音楽をやるうえでは外せないこと。
第3楽章の詞を考えるのはこれからだけど、
隣にいる人を愛する大切さ、きずなといった言葉が
今は浮かんでいます。
作曲家と対話するような気持ちで書きたい」と応えた。
ライフワークとしてクラシックの旋律に詞をつけて
歌っている平原さまは、既に「歓喜の歌」をカバーした
ミュージカルナンバーの「ジョイフル・ジョイフル」を歌っている。
「1万人の第九」では第3楽章をモチーフにした新曲に加え、
「ジョイフル・ジョイフル」も歌うという。
本番は12月5日午後3時から大阪城ホール。
ステージの模様は毎日放送で同23日午後4時から放送される予定だ。
また、17年間続けてきた大阪・ザ・シンフォニーホールでの
「21世紀の第九」公演を今年で終了し、12月18、19、21~23日の
5回公演でラストを飾ることも決まっている。
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交響曲第9番の第3楽章 Adagio molto e cantabile
この曲は、第2楽章が激しいテンポのスケルツォで、
この楽章がゆっくりと揺れるカンタービレ。
私は、この楽章にモーツァルトの最晩年の傑作
「クラリネット協奏曲イ長調Kv.622」の第2楽章と同じ世界を見ます。
『この世に別れを告げ、高みへと飛翔するピュアな魂』。
ちょっと、メランコリックが過ぎて、私らしくないかもデス。(^^)
あなたは、どのように思われますか。
(ende.)
