
(2010年(平成22年)8月24日(火):毎日新聞(夕刊))
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日本のフラメンコギターの第一人者・沖仁さまが、
5枚目のアルバム「アルートーケ」(ビクター)を発表。
その発売当日の7月7、8日に、スペイン・ムルシアで行われた
「第5回ニーニョ・リカルド・フラメンコギター国際コンクール」
国際部門で優勝するという快挙を成し遂げた。
スペイン語圏以外の優勝者は初めてという。
家族全員がギターを弾くという一家に育ち、クラシックを志すも、
ビセンテ・アミーゴを聴いて衝撃を受け、スペインに留学。
3年半の武者修行を終えて2000年帰国し、
以後「日本人の自分にしか弾けないフジメンコ」を探り続けてきた。
「要は民族音楽だし、特にギターはパコ・デ・ルシアの影響が強烈。
ビセンテはその重力圏にいながら、さらに洗練され、
可能性を提示していた。
これなら、外国人の僕にも道があるって思いました」と、
厳しい道のりのスタートラインを説く。

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その「フラメンコ愛」の源泉とは?
「フラメンコギターは、そもそもカンテ(歌)の伴奏なんです。
僕はカンテが最も愛される街・ヘレスで2年間修業した。
そこでの驚きは、街の人が『フラメンコとは幸せの音楽なんだ』と
自信を持って宣言している。『音楽の喜び』こそ、
僕をさらに、フラメンコの深みに誘い込んだ源流かな」
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民族的な社会の伝統や文化の差は?
「フラメンコ音楽は、そもそもアラブ・アンダルシア文化と
ジプシー文化の融合の上に成り立っている。
異人種の僕も、あえてその融合文化に向かいたかった」と信念を語る。
アルバムでは、自作もクラシックもフュージョンも
同一面に並べた「沖流」のフラメンコを、華麗に展開する。
しかし、そこに「アル・トーケ」(フラメンコギターを弾くこと)と
名付けた自負は、さらに大きくなっている。
(ende.)
