Ms.Violinistのひとりごと-焼き肉 無煙ロースター
(2010年(平成22年)6月29日:毎日新聞(夕刊))

新しい月に変わったし、学校も今日からということで、
ご一家やお友だち同士で、夕食に焼き肉を
楽しんでおられるのではないでしょうか。
今晩は、焼き肉にまつわるお話をさせていただきます。

*
焼き肉を食べる。
生から始まり、塩で焼き、タレで焼く。
タレが続くと「網を変えてください」とお願いする。
どうしてもタレや肉汁の焦げた味が気になる。

きれいな網が届くと、
気分も新たに、また食べることができる。
さて、この網である。こってり脂分やタレがこびりつく。
これを掃除するのは、大変な仕事。
大きな店になればなるほど手間は増える。
その網の洗浄を引き受けるのがファインという会社である。
社長の川上勇さん(71)と専務の三浦操さん(71)は
「平成8年会社を作り、最初は厨房用の洗剤を
販売していたのですが、平成10年ごろから焼き網の洗浄も
始めました」と。

工場内では、鉄板、ステンレスの網、
そして今、主流の使い捨で網の3種類が洗浄されているのだ。
洗浄し、消毒を施し、納入する。
得意先が増えると機械化が進むが、
最後の磨きは職人さんが丁寧に網を磨きこんで仕上げる。
最初は人海戦術でしたが、それにも限度があります」。
1日に洗浄する量は、鉄板が約350枚、ステンレスの網が
約3,000から3,500枚、使い捨て網が8,000枚ほどである。

使い捨てなのに洗浄? という疑間がわいてくる。
「中国から使捨ての網が入ってきます。
使ったあとは廃棄物となるのですが、もったいないし、
エコの時代ですから、なんとか再利用できないかなと
考えていろいろチャレンジしたのです」
と三浦さんは使い捨て網の再利用について話してくれた。

使い捨でを目的として製造されたモノに再び命を与える仕事だ。
かなりの試行錯誤を繰り返した。
ついに昨年、「使い捨て網のリサイクル」で実用新案特許を取得、
登録を済ませたのだ。「これは全国で当社だけです」と。
使い捨て網は仕上げが簡素だ。それに耐久性を持たせ、
肉の焦げ付きを軽減するコーティング技術を開発し、
繰り返し利用を可能にいたのでる。
その網は表面が黒色に仕上がるので「黒網」と呼ばれるようになった。
「使い捨て網は1枚約1グラム。普通の店ですと月に2,000枚使います。
それだけで約2キロの鉄が廃棄されることになるのです。
チェーン店を思うと毎月どれだけの鉄が廃棄物になるのか
と考えたのがきっかけです」と。
エコを考え、時代の要求に対応する。
そんな三浦さんの考えが大きな成果をもたらすのである。
(ende.)

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