Ms.Violinistのひとりごと-フルーツとコーヒー 朝食
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先々月のこと、小さいパン屋さん前で、
私の目がくぎ付けになった。

下ろされたシャッターに張り紙が7枚。
破ったノートや折り込みチラシの裏に所狭しと書き込み。
店主とお客がコトバでキャッチボールをしていたの。

始まりは、店側の文書。
「病気療養のため しばらくお休みします」。
キャッチボールの切っ掛けを作ったのがこれ。
「ファンの皆さま。毎日おいしいパンを作ってくださった
 おじさん、おばさんにメッセージを書きませんか」。

この文言に応じて、鉛筆で、サインペンで。
書く場がなくなる度に新たに張られた様子です。
「また、おいしいパン食べたい」
「大人になっても子供たちはここのパンが大好き。
 つらいことあると思うけど頑張って」。
部活動帰りによく来ていたらしい地元の中学生や
親子2代のファンもいた。

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店側の返信は2回。最新の文書は
「メッセージに支えられ、日に日に回復しています。
皆様の笑顔に会える日を楽しみに頑張ります 店主」。

病気の店主を励ます人たち。復帰を目指し懸命の店主。
それにしてもこの強い結びつきはどこから生まれたのか。
Ms.Violinistのひとりごと-未設定
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思い余って、店主の娘さんを尋ねてお話を伺っちゃいました。

開店は、35年前。父がパンを焼き、母が売る。
職人気質の父。
「体温が違うと味が変わる」と誰にもパン生地を触らせない。
口癖は「冷めてもおいしいのが本物」。

子どもがお小遣いで買える価格にし、よくおまけしてあげた。
早朝出勤などの人の求めに応え、
当初の開店時間を1時間繰り上げて朝6時には、
数種類のパンを用意した。
接客を担う母は一度来た客の顔を忘れず、
次に来ると親しく話した。そこにはいつも笑顔があふれていた。

父が入院したのは70歳になった今年2月。
倒れる直前まで痛みを我慢してパンを焼いていた。
症状は重く、やせていったが、
ある日、母がメッセージに気づいてメモして病室へ。
父は感激し、気力を取り戻した。
外出が許されると長い時間かけて黙ってメッセージを読んだ。
今は意欲的に筋カトレーニングに励む。

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店が愛される理由が分かった気がした。
安くておいしい。仕事に妥協がない。
人に優しい。地域の人にとっては
心があたたかくなる大切な場所だったのだ。
この場を借りて、店主さんにメッセージの中の一つを
おくらせていただきます。
「1日も早く、みんなが笑顔になれるパンを作ってね。」

今日も、よい一日になりますように。
(ende.)

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