
(2010年(平成22年)8月2日(土):毎日新聞(朝刊))
支局長からの手紙【負けて強くなる】
*
8月に入り、夏休みも佳境に。
真っ黒に日焼けした元気な子どもたちをよく見かけます。
夏休み最初の土曜日の先月24日に開催された、
第13回谷川杯争奪小学生将棋大会でのことでした。
棋道師範の田畑壽修さんが参加した児童に、
こう説明されておられました。
「負けた人は『負けました』と頭を下げること。
勝った人は『ありがとうございました』と言ってください」
将棋は勝負の世界です。
とはいえ、自分で負けを認めることは嫌なこと。
あなたは「まいった」や「投了」を使って、
「負けました」という言葉を口にすることから逃げていませんか。

*
大会で指導対局されている谷川浩司九段もあいさつの中で、
「負けました」と告げることについて、
次のように子どもたちに語りかけておられました。
「将棋は自立心、自主性を磨くのにいい。
自分で考えて決断し、自分で責任を取る。
自分の思い通りに駒を動かせることは楽しい。
でも、負けた時はつらいけれども負けを認める。
それが次につながります」
あいさつは続きます。
「最初から強い人、うまい人はいません。
悔しい思いをして強くなるという積み重ねが大切です。
負けは悔しくてつらいけれども恥ずかしいことではありません。
負けた分だけ強くなったと思ってほしい」
「涙の数だけ強くなれるよ」という歌もありましたね。
くじけることで前に進むことができるのです。
つらくても相手への礼儀も含めて潔く認める。
当然ですが、これは大人にも言えること。
不祥事があっても、言い逃れに終始する姿は見苦しいものです。

*
さて、夏休み。
自分で物事を考えて決めて行動する力を養うのに
大切な時期です、と谷川九段。
「まず1日の計画を立て、その通りできたかどうかを
振り返って反省して明日につなげましょう」と。
時は金なり、という言葉があります。
時間はみんなに平等に与えられたものですが、
1日は24時間と限りがあります。それを貴重なものととらえて
有効に使うことができるかどうか。だらだらと過ごせば、
せっかくの休みはすぐに終わってしまいます。
「負けました」は、
ピンチをチャンスに変える魔法の言葉。
何ごとにも勇気を出して臨んで、
まずは、この暑い夏を乗り切っていきましょう。
(ende.)
#
Special Thanks:Ms.Violinist.
The author is "Ms.Composer."
The verification is "Ms.Composer."
