ヴァイオリンを奏でられる皆様は、楽器の健康状態について、
ちゃんと関心を持たれていらっしゃいますか。

楽器の健康管理(メンテナンス)は、毎日の基礎練習と共に
皆様が日々、ご自分の楽器とお過ごしになる中で、
いつも気遣いをしてあげたいものですね。
早くに楽器の病気(異変)に気が付けば、それだけ
病気からの回復も早くなりますから。

上手に調整された楽器からは良い音が出ますし、
長時間に渡って練習しても、疲れにくいのです。

ヴァイオリンを奏でる皆様向けの
"奏者がすべき保守"についてのレクチャーを
させていただきたいと思います。
それでは、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

Ms.Violinistのひとりごと-肩当ての位置(裏)
#
第37回「ニスの剥がれ」
裏板に塗布されているニスにケースの跡が点々と
付いてしまうことがよくあります。
また、肩当を装着する部分や、手でよく触れる部分などの
ニスが摩滅により剥げていくことがあります。

さらには、ニスの配合によっては、
楽器を高温下に置いていた場合、クリーナーとの相性が
悪い場合などに、ニスが剥がれたり
ヒビが入ったりするトラブルがあります。
今回は、ミスの剥がれについて考えてみたいと思います。

●「楽器の肩の部分等、手とこすれる部分がはげている場合」
これは、どの楽器でも起こる普通の症状です。
注意すべき事は、木の地が出てしまっていると良くないということです。
このような状態になるまでニス修理をしないでおくと、
木に汚れや汗が染み込んでしまうのです。
こうすると木材が湿って変形してしまったり、
また、後でその上にニスを塗った場合でも、
汚く仕上がってしまいます。

現在、手のこすれる部分が黒っぽく汚れている場合や、
または木地が見えている場合には、
できるだけ早めにニス修理をすべきでしょう。
こうすることによって、
楽器の傷み具合は最小限に抑えることができます。

●「細かく、ポロポロと剥がれ落ちる場合」
これは元々のニスが硬すぎるために起きるのです。
少しぶつけただけでも、ニスが剥がれてしまうので、
楽器全体にわたってニスが傷むのが特徴です。
そして剥がれた部分にニスを足す修理を行っても、
またいずれ別の部分が剥がれ落ちてしまいます。

このような楽器の場合、
その持ち主は「ニスを塗り直した方が良いのでは?」
と考えることが多いですが、
出来る限り「塗り直し」は、なさらない方が良いと思います。
というのは、塗り直すことは修理代金がかかる割に、
それに匹敵するようなメリットが得られないからです。
ですから、ニスの現状がよほど悪い場合を除いて、
これまで通り、ニスが剥がれたら「こまめにニス修正」
というのがよいと思います。
こうすることによって、剥がれたニスの断面を
新しいニスで固定し、さらに悪化することを防げるからです。

このような楽器の場合、
「ニスが剥がれるのは当たり前」という割り切りが必要です。
もしも楽器全体に渡って、服や床に降りかかるほどに
ボロボロとニスが剥がれ落ちたとき、
そのとき初めて「ニスの塗り直し」を考えればよいでしょう。

Ms.Violinistのひとりごと-肩当ての位置(横)

●「ニスにヒビが入っていたり、またシワがある場合」
これは元々のニスの質が悪かった場合の他、
楽器を高温状態下に置いてしまったり、
また、クリーナーなどの薬品との相性が悪かった場合に起こります。
また、汗や松ヤニなどの掃除をしないで、
さらにその上からニス修理をしてしまった場合にも起こります。

この場合には、楽器の見栄えが悪いので、
ニス表面の修理を行うのがよいと思います。
方法としては、ニスの表面をほんの少しだけ削り落とし、
磨き直すだけで症状が改善する場合もあります。
重傷の場合には、透明ニスを割れ目に塗り込んで、
表面を再び平らに磨き直すという方法が採られます。

●「ケースの痕が付いてしまっている場合」
裏板など、ケースの跡が細かく点々と付いてしまうことは
よくあります。これはあまり神経質になることはないでしょう。

良質なニスはある程度柔らかなものなので、
どうしてもケースの跡が付いてしまうこともあるのです。
もしも症状が酷い場合には、
表面に少し固めのニスをほんの一層だけ塗って、
ニス表面をコーティングしてしまう方法もあります。
しかし一番良いのは、あまり神経質にならないことです。
ニスを大きくいじると、将来、退色度合いが異なって、
ニスがまだらになってしまうことも多いからです。

もしも、これが「痕」ではなくて「傷」でしたら、
それはケース自体が悪いので、至急ケースを交換すべきです。

ニスの傷みを、こまめに修理することはとても大切なことです。
しかし、重箱の隅をつつくような、神経過敏ではいけません。
必要以上の大きなニス修理は、
将来的にニスのバランスを崩してしまうからです。
ですから必要最小限で、かつ、確実なニス修理を行うべきなのです。


皆様が素敵なViolinライフを過ごされますように。

(Ende.レクチャー:ヴァイオリニストがすべき保守
 (第37回) 「ニスの剥がれ」)
The author is "Ms.Violinist."
The verification is "Ms.Composer."

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