Ms.Violinistのひとりごと-ザ・シンフォニーホール 舞台袖
(2010年(平成22年)7月21日(水):毎日新聞(夕刊)より)
「いいもの」へ聴衆と奏者 心一つ
「100回を達成した無料クラシックコンサート」

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コンサートのチケット、いくらなら買いますか?
邦人演奏家のリサイタルの場合、最多価格帯は3,000~5,000円。
海外のオペラの引っ越し公演だと5万~6万円になることもあるが、
近年はワンコインコンサートも広まってきた。

チケット代は会場使用料や報酬、チラシ代などの経費と、
入場料収入見込みを換算して計算されるが、集客を考えて
赤字覚悟の価格設定でリサイタルを主催する演奏家も少なくない。
Ms.Violinistのひとりごと-未設定
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そんなジレンマを一足飛びに越えて、
無料演奏会を毎月第3木曜日に8年半も継続してきたのが、
NPO法人「クラシックファンのためのコンサート」。
その第100回記念演奏会が15日、大阪・イシハラホールであった。

主宰は兵庫県西宮市のピアニスト、黒瀬紀久子氏。
「演奏家が演奏ではなく、
切符や動員に気をとられるのは本来の姿ではない。
本当に聴きたい方に質の高い音楽を届けられたら」との思いで、
2002年1月に大阪・肥後橋のイシハラホールの
リハーサルルームを使ってスタートさせた。
演奏家は関西で活躍する実力者をそろえ、
ソナタ全楽章など通好みなプログラムの1時間。

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無料化が実現できたのは必要経費はすべて寄付でまかない、
スタッフはボランティアという仕組みができたから。
会報の最新号によると、昨年10月以降に集まった賛助金は
215万円余り。決して多額ではないかもしれないが、
その中で謝礼を支払い、さらにホールに足を運べない
クラシックファンのために、老人ホームなどに出向いて
無料訪問演奏会も開いてきた。

「クラシックファンが真剣に耳を傾けてくれて、演奏家は
その空気の中でいい演奏をすることだけに専念する。
それでいいんです」と黒瀬氏。

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100回記念演奏会は出演者も多く、ちょっと豪華な2時間。
無料イベントに多いガサガサした空気はなく、
じっくり聴きたいという聴き手の熱意が空間を包む。
そんな聴衆を育てたのも、黒瀬氏らスタッフの心意気のたまものだ。
コンサートは8月は休み、
次回は9月16日、秋山裕子氏のチェンバロ。
(ende.)

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