テレマンは、後期バロック音楽を代表するドイツの作曲家です。
生前は同時代の作曲家であったJ.S.バッハやヘンデルよりも、
人気と名声のあった作曲家でありました。現代で喩えれば、
リリースする曲が次々とヒットチャートの上位を独占する、
シンガーソング・ライターといえるでしょう。今日と違い、
作曲家は演奏家でもあった時代なのですから。
さて、4,000を超える彼の作品はなぜ、そんなに人気が
あったのか。少し探ってみましょう。
まず、《タイトルの奇抜さ》があげられます。
次のうち、「テレマンの作品に存在しない」タイトルは
どれでしょうか?

(1)ターフェルムジーク(食卓の音楽)
(2)忠実な楽長(音楽の師)
(3)エッセルチーツィ・ムジチ(音楽の練習帳)
(4)家具の音楽

$Ms.Violinistのひとりごと-テレマン(肖像画)
























それは「家具の音楽」です。
近代フランスの作曲家であるエリック・サティが1920年に
作曲した室内楽曲です。
コンセプトが変わっていて、今日のBGM的な発想に基づいています。
つまり、自己主張が弱く、ずっと流れていても邪魔にならない音楽、
意識的に聴かれることのない音楽、といったものを目指して書かれた
曲であるのです。ピアノとトロンボーン、そして3本のクラリネットで
演奏するように指示されています。

「ターフェルムジーク」は、管弦楽組曲、協奏曲、四重奏曲、
トリオ・ソナタ、独奏曲の5曲を一組したもので、全3集です。
別名「バロック音楽の百科全書」とも呼ばれています。
宮廷の宴席で好んで演奏された室内楽集で、《機会音楽の走り》、
後の時代に、J.ハイドンが同じ目的で大量の弦楽四重奏曲を
領主に提供し続けていたのと重なります。
 
「忠実な楽長」は、自作の《ガリバー組曲》等、全68曲。
ソナタや組曲の他、声楽曲やカノンなど種々の曲からなり、
当時名の知れた音楽家たちに《作品を無償で提供》するように
呼びかけていたためにバッハ、ゼレンカなど他人の曲も
含まれています。今日的にいえば、コラボアルバムですね。

「エッセルチーツィ・ムジチ」は、ソロ・ソナタとトリオ・ソナタが
各12曲ずつで、全24曲です。
ソロ・ソナタは旋律楽器+通奏低音かチェンバロ独奏。
トリオ・ソナタには旋律楽器+チェンバロ+通奏低音という
変わった編成のものが4曲含まれています。

様々な楽曲を含んでいるところから、いずれもアマチュアが、
夕べの後に音楽を楽しむのに、手元にある楽器を持ち寄って
気軽に演奏する楽しみをテレマンは想定していたと思われます。
また、比較的簡単な技術でも、派手な演奏効果を生むように
楽曲に《見せ場》を忍ばせておくこともわすれないのが、
当時の大人気作曲家でいられた理由のひとつであるのでしょう。

$Ms.Violinistのひとりごと-テレマン ターフェルムジーク(ジャケット)
















(Ende.大音楽家の関連
 …テレマン、バッハの時代から(第3夜) Jun 17, 2010)
The author is "Ms.Violinist."
The verification is "Ms.Composer."

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