$Ms.Violinistのひとりごと-東京医科歯科大学












#
先日、とある場所で
ご自身も、心の病になられたご経験を持つ
精神科医さまと対談をさせていただきました。
その中から、私が興味を惹かれた話題を
ご紹介させていただきます。
どうぞ、しばらくの間、お付き合いくださいませ。

#
私(精神科医)の担当医のNさん(精神科医)は、
「心の病」に対し、まず「休ませる」ことを強調する。
これは、私も自分の病の経験を振り返って、
とてもよくわかる気がする。

登校拒否者にも出社恐怖者にも、
両親や配偶者を含む他者からの「頑張れ」の後押しは、
当人にとっては、逆効果となる。
「行きなさい」は、「死になさい」に等しいと、
Nさんはいう。

治療には、自分と正面から向き合うしかないわけだが、
心が乱れたり、落ち込んで、それが出来ない状態にある。
まず、自分と向き合う環境作りが必要になる。
その環境作りは、なかなか素人には難しく、
ただ一つできることは、休ませることということになる。

#
職場でも、従業員の心の問題(メンタルヘルス・ケア)が
ますます重要になるだろう。
しかし、他人の心の状態は、体の疾患や外傷のように
体温や出血といった客観的な判定基準がないだけに、
説得力を欠く。

もっとわかりやすくいえば「休みたい」のは怠慢からか、
心の病からかの区別がつきにくい。
結局、職場における専門医や臨床心理士の存在と、
彼らの的確な判断が重要になる。

しかし、わが国のサラリーマン社会の現状は、
それにはほど遠い状態にある。
ただ、最近、長時間労働から社員がうつ病になり、
自殺した大手の広告代理店と製鉄会社に対し、
責任は会社側にありとして、遺族に損害賠償の支払いを
命じる判決が相次いで出た。
企業に反省を迫る動きがないわけではないのである。

#
阪神大震災が起きたとき、私の心の状態は最悪であった。
たまたま他所に住んでいた私に、地震の直接的被害は
まったくなかった。むしろ震災報道という大河の流れに
身を任せるしかない雰囲気は、落ち込んだ心には
やさしかった。

そう感じたのは、私だけではなかったようだ。
神戸市と周辺の病院の精神科でも、患者が急減した
との報道があった。

#
戦争中には、神経症(ノイローゼ)患者が減少すると
いわれる。個人的な心の問題など、どうでもよくなるから
との見方の一方で、国民の気持ちが一体化するから
との見方がある。
私はどちらかというと、後者の見解を取りたい。

震災報道に追われる女性記者のひとりが、
「私もボランティアに参加したい」と
しぼり出すような声でつぶやいたという話を聞いた。

この一体感の現象は日本に限らないようだ。
英国のダイアナ元妃が事故死してから3カ月間、
同国内の病院で、不安やストレス、うつ病などを
訴える患者が減少し、半減した所もあったという。
人間はやはり、もたれあいを実感できるとき、
幸せなのだろうか。

#
私が対談させていただいた精神科医が、
対談後のコーヒーブレイクに私に話してくださいました。
「神経症からの脱却の第一歩は、
 "まず自分と向き合う"こと。
 そのために"休養"が唯一の方法であると、
 周囲を含めて自覚することである。」

どうか、皆様もご自身を振り返ってお考えください。
(ende.)

人気ブログランキングへ