ヴァイオリンを奏でられる皆様は、楽器の健康状態について、
ちゃんと関心を持たれていらっしゃいますか。

楽器の健康管理(メンテナンス)は、毎日の基礎練習と共に
皆様が日々、ご自分の楽器とお過ごしになる中で、
いつも気遣いをしてあげたいものですね。
早くに楽器の病気(異変)に気が付けば、それだけ
病気からの回復も早くなりますから。

上手に調整された楽器からは良い音が出ますし、
長時間に渡って練習しても、疲れにくいのです。

ヴァイオリンを奏でる皆様向けの
"奏者がすべき保守"についてのレクチャーを
させていただきたいと思います。
それでは、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

$Ms.Violinistのひとりごと-楽器備品棚(中央)
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第29回「金色のE弦」
●"E線で金色の物の効果について。"
 ヴァイオリンのE線の中には金色の弦があります。
 多くは「○○ゴールド」という呼ばれ方をしています。
 代表例としてはOliv弦のE線ですが、
 最近はそれ以外の多くの弦(インフェルド、オブリガート等)でも
 金色のE線が使われるようになってきました。
 では、これら「金色」は何のためにあるのでしょうか。

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「なぜ「金色」をしているのか」
 ゴールドタイプのE線といっても、
 無垢の金線でできているわけではありません。
 これは普通のスチールタイプのE線に金メッキをしている
 だけなのです。
 従って、長く使っているとメッキが薄くなったり、
 質の低い場合には、メッキが剥がれてくる弦もあります。
 もちろん、ここでいう「金メッキ」とは、
 安物の意味で使われているのではありません。
 もしも無垢の金を使ったE線なら、引っ張り強度が弱すぎて、
 とてもヴァイオリンの弦には使えないからです。
 高価だから金を使えばよいというわけでもないのです。

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「金メッキの効果:サビ防止」
 昔のスチール弦は現代の物よりも質が低く、
 サビやすい物でした。
 弦を張ってそんなに経っていないのにサビが浮いてきます。
 このような弦の場合、指で音階を押さえる時に下手をすると
 指を切ってしまうのです。
 また、そうでなくても気持ちの良いものではありません。
 また弦がサビるということは弦の線密度、
 剛性にムラが生じるという事です。
 従って弦の倍音成分が乱れて、音が悪くなってしまうのです。
 ゴールドタイプの弦の発想は、この理由から来たものです。

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「金メッキの効果:高級感」
 最近の弦セットに多い理由と考えられますが、
 E線を金色の弦にすることで商品に高級感、
 付加価値を持たせるという理由です。
 E線が金色をしていると「高級な弦」に思えます。
 また、無意識に「良い音が出そう」と思い込めます。
 このような心理的なものも音の内と言えるのです。

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「金メッキの効果:物理特性の変化」
 金メッキをする理由の最後に考えられる事柄として、
 金メッキをする事によって
 実際に生じる弦の物理特性の変化、音響的な影響が
 挙げられます。
 金メッキを施す事によってスチール弦の線密度や
 剛性に変化が生じて、音にも金メッキ処理による
 変化が現れるというものです。
 またスチール線と金メッキをした弦とでは、
 弓毛の摩擦係数が違うかもしれません。

$Ms.Violinistのひとりごと-楽器備品棚(上側)
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「金メッキの効果:結論」
 私は、E線の音のキャラクターを決定づけるものは
 スチール自体の成分と、弦の太さがほとんどだと思います。
 従って、実際の音色的な意味では「ゴールド」に
 大きな効果は無いと思うのです。
 しかし、サビ防止の効果がある事は確かです。
 この意味での「ゴールド」にはきちんと意味、
 効果があると思います。
 また視覚的な効果もかなりあると思います。
 

皆様が素敵なViolinライフを過ごされますように。

(Ende.レクチャー:ヴァイオリニストがすべき保守
 (第29回) 「金色のE弦」)
The author is "Ms.Violinist."
The verification is "Ms.Composer."

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