皆様、ごきげんいかがですか。
私もVnのリペアやグッズで大変にお世話になっている
アルチザンハウス(東京・品川)の工房がある
"アルチザンハウス神戸"の職人さんとの談話や
トピックスを中心に更新してまいります
"(公認)アルチザンハウスKobe日記"の最新号(2010年5月30日号)が
届きましたので、さっそくUPさせていただきます。

ナビゲーターは、神戸の在住の親友"Ms.Composer."です。
乞うご期待ください。
さて、今回は、どんな話題で盛り上がったのでしょうか。
それでは、《(公認)アルチザンハウスKobe日記》を
ごゆるりとお楽しみくださいませ。
by Ms.Violinist.


☆”
ごきげんよう! 私は"Ms.Composer."と申します。
今回もわたくしめのコラムにお付き合いください。
よろしくお願いします。

今回、第14回は
「弦の劣化について」
というテーマで進めてまいります。

$Ms.Violinistのひとりごと-ヴァイオリン弦色々













#
(Ms.Composer)からの質問:
「弦が劣化するということは、どういう意味なのでしょうか?」

#
(職人さんの答え):
「一言で表すと、弦の劣化とは音が悪くなることです。
 しかし、楽器のユーザーは毎日楽器と接しています。
 従って、楽器の音の微妙な劣化による変化に対して鈍感に
 なりやすいことも事実なのです。
 そこで「弦の劣化」の仕組みを知ることで、
 このことに対する客観的な意識が生まれます。」

$Ms.Violinistのひとりごと-楽器備品棚(中央)












#
(Ms.Composer)からの質問:
「弦の劣化と音色についてお話ください。」

#
(職人さんの答え):
「重要なのは、弦が劣化することによって、
 どのような音色的な弊害が生まれるかです。
 良い「弦」を設計する上では、相反する要素である
 「細さ・重さ・均一さ・しなやかさ」を同時に
 満たさなければなりません。
 もちろん、原理的にはこれらを完全に満たすことは
 不可能なのですが、可能な範囲で満たすことこそが、
 「良い弦」なのです。
 これは音程感と、音量と張りの両方を備えた音です。
 さらに、押さえやすい、各弦のバランスが取れている
 という条件も満たされていなければなりません。

 弦の劣化とは、今言った条件に乱れが生じ、
 音色的・演奏的に悪影響が出るということです。
 音に張りが無くなりくぐもった音になります。
 また倍音に乱れが出て、音程感が取り難くなります。」

$Ms.Violinistのひとりごと-アルチザン・作業台 右側近影












#
(Ms.Composer)からの質問:
「はい。では、弦の劣化の要因についてお話ください」

#
(職人さんの答え):

●「弦の「均一さ」の乱れ 」
  新しい弦は可能な限り「均一」に作られています。
  ところが弾いているうちに、乱れが生じるのです。
  駒や上枕に接している部分が折れ曲がってしまったり、
  またはその部分の巻線が乱れてしまいます。
  または、頻繁に押さえるポジションの巻線が
  ほつれてしまうということもよく起こります。
  この他にも、弓を擦り付ける部分が
  目に見えない範囲で磨耗して細くなったり、
  押さえる部分も、やはり目に見えない範囲で
  細くなってしまいます。
  さらには汗などが巻線に染みこみ、
  「均一さ」を乱してしまいます。
  この他にも、弦の表面に錆が付いてしまった場合でも、
  弦の均一さに乱れが生じてしまうのです。
  このように、弦の「均一さ」に乱れが生じると、
  理想的な倍音成分が出なくなってしまうのです。
  こうなってしまうと、実際に押さえている音の音程が
  正しくても、その倍音成分がくるっているために、
  自分が弾いている音が合っているのか間違っているのかが
  分からなくなってしまうのです。

●「弦の伸び 」
  弦は使っている内に徐々に伸びます。
  これは、弦を交換したばかりの時に、
  すぐに音程が下がり、頻繁に巻き上げなければならないので
  実感されていることでしょう。
  この「伸び」とは、少々専門的な言い方になりますが、
  「線密度の低下」を表します。
  簡単に言えば、弦の重さが減ってしまうのです。
  弦は重いほど、弦の張力が強くなります。
  すなわち「張りのある倍音成分」が出るのです。
  これによって、ホールの遠くまで届くような音色を出すことが
  可能なのです。
  もちろん、「張りのある倍音声分」と言っても、
  その度合いや質が重要であることは当然のことですが。
  さて、弦が伸びてしまうということは、
  音色が丸くなってこもってしまうということに等しいのです。
  弦の劣化においては、一番に感じ取ることができるでしょう。」

●「弦の「しなやかさ」の乱れ」
  最近のほとんどの弦は、とても複雑な構造をしています。
  芯材の構造の複雑さだけではなく、
  巻線も二重、三重に巻かれているのです。
  これは「弦を重くしたいが、しなやかさを保ちたい」
  というための構造です。
  事実、新品の太い弦を曲げてみてください。
  その太さと重さの割に、とてもしなやかだということに
  驚くことでしょう。これが現代の「ハイテク弦」なのです。

  さて、この様な複雑な構造故に、弦を使っている内に
  劣化も起きるのです。
  新品の時には規則正しく多層に巻かれていた巻線が、
  弦が伸びることによって乱れてしまうのです。
  具体的には、巻線の間隔が空いてしまうために、
  下層の巻線に上層の巻線が食い込んでしまうのです。
  この様な状態の弦は、しなやかさが無くなってしまいます。
  この事は、交換する古い弦が、新品の状態よりも
  かなり硬くなっているという事からも理解できることでしょう。
  すなわち、これが「劣化」なのです。」

以上。

#
ご褒美にちょっと、自己主張を書かせてもらえますので、
この場を借りまして一言。(面倒だから、いつも同じですが。)
「現代音楽を聴きましょう。特に邦人作品を。
 すばらしい試みが、あなたのおいでをお待ちしています!」
 ありがとう!

By "Ms.Composer." Special Thanks for "Ms.Violinist"

(Ende.(公認)アルチザンハウスKobe日記 2010年5月30日号)
The author is "Ms.Composer."
The verification is "Ms.Composer.

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