$Ms.Violinistのひとりごと-東京医科歯科大学












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先日、とある場所で
ご自身も、心の病になられたご経験を持つ
精神科医さまと対談をさせていただきました。
その中から、私が興味を惹かれた話題を
ご紹介させていただきます。
どうぞ、しばらくの間、お付き合いくださいませ。

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私(精神科医)の担当医のNさん(精神科医)は、
私の精神科医としての体験にも、耳を傾けてくれた。
患者から見れば、精神科医としての私は、
『薬はたくさんくれるが、自分の話を
十分聞いてくれるとは言いがたい医者』だった
私の経験談に、Nさんは特にコメントを加えなかった。
同業者に対する配慮もあるのだろう。

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新任医師として着任した病院で、
私が「死にたい」と思うほど悩んだ経験に、
Nさんは、
「新しいことをするのは、ストレスなのです。
やりたいことをするのと、やらされるのでは
ストレスが異なる。
やったことがないことをやらされるとき、
大きなストレスが生じる」と語る。

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一方、人は悩んで、悩み抜いて成長する。
なぜ悩むかというと、これまでのやり方、あるいは生き方が
頭を打ったからである。
中途半端ではなく、とことん悩む。大の男が涙を流して、
のたうち回ったとき、脱皮できる。
心理療法の世界では、この悩む状態を「創造の病」と呼ぶ。

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しかし、私たちが悩んでいるときは、このことに気が付きにくい。
そして、落ち込み、生きることに絶望する。
そのとき、専門医の助けが必要になることもあろう。
カウンセリングや薬で、自分を取り戻したとき
初めて「創造の病」であったことに気付く。

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回復には、自分自身と正面から向き合うことが必要なのだ。
ノイローゼ症やうつ病に陥ると、周囲ばかりが気になって、
自分自身を見失う。
治療とは、この自分と向き合わせることに、ほかならない。
しかし、このことはそんなに簡単なことではない。

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最近、若い人たちに精神カウンセラー(臨床心理士)を
職業として志望する人が増えているといわれる。
若い人の間で、精神科を受診することにそれほど抵抗が
なくなってきていることは歓迎すべきことだ。

しかし、お世話になった恩返しにといった気持ちでは、
カウンセリングは難しい。患者は冷や汗を流し、胃を痛め、
下痢しながら、自分探しに必死になっている。
患者と同じ気持ちになるぐらいでは、治療はおぼつかない。
人類が誕生して以来、自分を知ることが最も難しいと、
Nさんは断言する。 

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私が対談させていただいた精神科医が、
対談後のコーヒーブレイクに私に話してくださいました。
「悩むのは自分自身を知り、
 脱皮するための通過儀礼であり、
 悩むことへの自己嫌悪を感じる必要はない。」
という簡素なお言葉でした。

どうか、皆様もご自身を振り返ってお考えください。
(ende.)

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