皆様、ごきげんいかがですか。
私もVnのリペアやグッズで大変にお世話になっている
アルチザンハウス(東京・品川)の工房がある
"アルチザンハウス神戸"の職人さんとの談話や
トピックスを中心に更新してまいります
"(公認)アルチザンハウスKobe日記"の最新号(2010年5月16日号)が
届きましたので、さっそくUPさせていただきます。
ナビゲーターは、神戸の在住の親友"Ms.Composer."です。
乞うご期待ください。
さて、今回は、どんな話題で盛り上がったのでしょうか。
それでは、《(公認)アルチザンハウスKobe日記》を
ごゆるりとお楽しみくださいませ。
by Ms.Violinist.
☆”
ごきげんよう! 私は"Ms.Composer."と申します。
今回もわたくしめのコラムにお付き合いください。
よろしくお願いします。
今回、第12回は
「ヴァイオリンの糸巻きは、何故、あの形なのですか?」
というテーマで進めてまいります。

#
(Ms.Composer)からの質問:
「ヴァイオリンの糸巻きはどうして歯車を使った、
(ギターやコントラバスのような)機械式ではないのですか?」
#
(職人さんの答え):
「これはとても興味深い質問です。この事に関しては、
チューニングに困難を感じておられる初心者にとって、
特に疑問な事でしょう。
ヴァイオリン族は、正しいチューニングが出来て
初めて正しい音程が弾ける楽器だからです。
従って、ヴァイオリンの初心者に限って言えば、
糸巻きがギターのようにネジ式で、より正確な
チューニングができた方が演奏の上達は早いはずなのです。
しかし、ヴァイオリン族の糸巻きが機械式でないのには
きちんと理由があります。」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「では、機械式でない理由をお話しください。」
#
(職人さんの答え):
「機械式糸巻きには幾つかの種類がありますが、
殆どは、ウォームギアを利用したタイプです。
特徴は、強い張力の弦であっても、弦を微妙に
巻き上げられ、加えて弦が緩んでしまうことが無いのです。
ウォームギアは、とても複雑な構造をしています。
このタイプの機械式糸巻きが実用化されたのは、
比較的に新しい時代のことなのです。
すなわち、ヴァイオリンやギターの黎明期には、
実用的な意味では存在しませんでした。
一方、ヴァイオリン属で使われている糸巻きとは、
とても原始的構造をしていて、弦を絡めた棒を単純に
差し込んで止めているだけのものです。
「摩擦式」と言われます。
これはヴァイオリン族だけではなく、バロックギターや
三味線など、多くの楽器に見受けられます。
この方式の糸巻きは、元々は単なる「製作の簡単さ」と
「チューニングの簡単さ」から用いられたものだ
と思います。
しかし、長年の経験と試行錯誤の中で、そのメリットも
確実にあるという事もわかってきました。
それこそが現在、単純な糸巻きがヴァイオリン族に
用いられている理由なのです。 」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「では、それぞれのメリットとデメリットについて。
まずは、機械式糸巻きについてお願いします。」
#
(職人さんの答え):
「"機械式糸巻き"の定義を、
ウォームギアを用いたタイプの糸巻きとしてお話します。
このタイプの特徴は、先にも述べましたように、
強い張力の糸巻きでも、微調整可能に巻き上げることができる
ということです。また、弦が大きく緩んでしまうこともありません。
この特徴から、弦の張力の強いコントラバスにおいて
採用されました。
機械式糸巻きには、欠点がたくさんあります。
まず、その重さです。その構造上、金属で作らなくてはならず、
さらに摩擦式の糸巻きに比べて構造がとても複雑です。
部品が多くなり、製品の重さが大きくなってしまうということを
意味しています。コントラバスのような大柄な楽器においては、
その影響は許容範囲かもしれませんが、ヴァイオリンのような
軽い楽器においては音響的に大きな影響を受けてしまいます。
また、ヴァイオリンの構え方では、
糸巻きの部分が重くなってしまうのはバランスが良いないのです。
次に言えることは、ウォームギアのギア間、
または各部品間での「遊び」の問題です。
ギターと違ってヴァイオリンのように
連続的に音を出し続ける場合、
この「遊び」が悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
それは摩擦熱による音量・音質の低下や、
チューニングの乱れです。
もっとも、これは原理的な事柄で、
ヴァイオリンに求める音質によっては、
人によっては無視できる範囲のものでしょう。
さて、最後に挙げるデメリットは、
機械式糸巻きの「固定」に関することです。
機械式糸巻きは、その構造が複雑なために、
トラブルも多くなります。
修理の時に外すこともあります。
修理のたびに、糸倉側面が傷んでしまう可能性が高いのです。
現実に、古いコントラバスの多くは、糸巻きの固定部分に
大きなダメージを持っていることが多いです。
長年の間には、装着する糸巻きのサイズが変わったり、
または形が変わったりするため、そのたびに糸倉の側面に
切削加工が施されてしまうからです。
また、それを固定するネジの部分もあちこち変わるために、
そのたびに穴が空けられたりしてしまうのです。
そのような作業を繰り返す内に、綺麗な糸倉の楽器であっても、
見た目が台無しになってしまうのです。」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「摩擦式については、いかがですか?」
#
(職人さんの答え):
「メリットはシンプルさです。これによって軽く、
そして構造的な「遊び」が無いために、音響的に効率が良いのです。
また、シンプルさは致命的なトラブルを最小限に抑え、
良質な材料と技術で製作された糸巻きは100年近くも
問題なく使用されることもあります。
また、単純さは、長年に渡る楽器の修理の面でも
大きなメリットをもっているのです。
これは実際に古い楽器を修理していると、とても感心することです。
また、チューニングの精度も、この摩擦式のメリットです。
調整が良くできていて、プロの演奏者においてという
前提付きではありますが、摩擦式の糸巻きは
非常に精度の高いチューニングが可能です。
デメリットは、初心者や調子の悪い楽器においては、
まともなチューニング自体が不可能ということです。
これは深刻な問題です。
しかし、一時的にテールピースにアジャスターを付けて
解決するなどの方法もあります。」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「では、なぜヴァイオリン属は摩擦式を採用しているのですか?」
#
(職人さんの答え):
「摩擦式の糸巻きは少々のデメリットがあったとしても、
それを上回るメリットが存在すると考えます。
ヴァイオリンの糸巻きのシンプルな構造は、
原始的なのではなく、洗練された構造と言えます。
これまでも、ヴァイオリンの糸巻きについて、
様々なものが試されました。
機械式糸巻きも存在しましたし、摩擦式にネジを加えた構造の
糸巻きも存在しました。
しかし、結果的にそれらの中から生き残ってきたのが、
現在のタイプの糸巻きだったのです。
また、摩擦式糸巻きのテーパも、長年の試行錯誤のなかで
決まってきたものなのです。
このように、ヴァイオリンの糸巻きのシンプルさは、
試行錯誤の上で出来上がった、
「"非常に高度なシンプルさ"と言えると思います。」
以上。
#
ご褒美にちょっと、自己主張を書かせてもらえますので、
この場を借りまして一言。(面倒だから、いつも同じですが。)
「現代音楽を聴きましょう。特に邦人作品を。
すばらしい試みが、あなたのおいでをお待ちしています!」
ありがとう!
By "Ms.Composer." Special Thanks for "Ms.Violinist"
(Ende.(公認)アルチザンハウスKobe日記 2010年5月16日号)
The author is "Ms.Composer."
The verification is "Ms.Composer.

私もVnのリペアやグッズで大変にお世話になっている
アルチザンハウス(東京・品川)の工房がある
"アルチザンハウス神戸"の職人さんとの談話や
トピックスを中心に更新してまいります
"(公認)アルチザンハウスKobe日記"の最新号(2010年5月16日号)が
届きましたので、さっそくUPさせていただきます。
ナビゲーターは、神戸の在住の親友"Ms.Composer."です。
乞うご期待ください。
さて、今回は、どんな話題で盛り上がったのでしょうか。
それでは、《(公認)アルチザンハウスKobe日記》を
ごゆるりとお楽しみくださいませ。
by Ms.Violinist.
☆”
ごきげんよう! 私は"Ms.Composer."と申します。
今回もわたくしめのコラムにお付き合いください。
よろしくお願いします。
今回、第12回は
「ヴァイオリンの糸巻きは、何故、あの形なのですか?」
というテーマで進めてまいります。

#
(Ms.Composer)からの質問:
「ヴァイオリンの糸巻きはどうして歯車を使った、
(ギターやコントラバスのような)機械式ではないのですか?」
#
(職人さんの答え):
「これはとても興味深い質問です。この事に関しては、
チューニングに困難を感じておられる初心者にとって、
特に疑問な事でしょう。
ヴァイオリン族は、正しいチューニングが出来て
初めて正しい音程が弾ける楽器だからです。
従って、ヴァイオリンの初心者に限って言えば、
糸巻きがギターのようにネジ式で、より正確な
チューニングができた方が演奏の上達は早いはずなのです。
しかし、ヴァイオリン族の糸巻きが機械式でないのには
きちんと理由があります。」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「では、機械式でない理由をお話しください。」
#
(職人さんの答え):
「機械式糸巻きには幾つかの種類がありますが、
殆どは、ウォームギアを利用したタイプです。
特徴は、強い張力の弦であっても、弦を微妙に
巻き上げられ、加えて弦が緩んでしまうことが無いのです。
ウォームギアは、とても複雑な構造をしています。
このタイプの機械式糸巻きが実用化されたのは、
比較的に新しい時代のことなのです。
すなわち、ヴァイオリンやギターの黎明期には、
実用的な意味では存在しませんでした。
一方、ヴァイオリン属で使われている糸巻きとは、
とても原始的構造をしていて、弦を絡めた棒を単純に
差し込んで止めているだけのものです。
「摩擦式」と言われます。
これはヴァイオリン族だけではなく、バロックギターや
三味線など、多くの楽器に見受けられます。
この方式の糸巻きは、元々は単なる「製作の簡単さ」と
「チューニングの簡単さ」から用いられたものだ
と思います。
しかし、長年の経験と試行錯誤の中で、そのメリットも
確実にあるという事もわかってきました。
それこそが現在、単純な糸巻きがヴァイオリン族に
用いられている理由なのです。 」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「では、それぞれのメリットとデメリットについて。
まずは、機械式糸巻きについてお願いします。」
#
(職人さんの答え):
「"機械式糸巻き"の定義を、
ウォームギアを用いたタイプの糸巻きとしてお話します。
このタイプの特徴は、先にも述べましたように、
強い張力の糸巻きでも、微調整可能に巻き上げることができる
ということです。また、弦が大きく緩んでしまうこともありません。
この特徴から、弦の張力の強いコントラバスにおいて
採用されました。
機械式糸巻きには、欠点がたくさんあります。
まず、その重さです。その構造上、金属で作らなくてはならず、
さらに摩擦式の糸巻きに比べて構造がとても複雑です。
部品が多くなり、製品の重さが大きくなってしまうということを
意味しています。コントラバスのような大柄な楽器においては、
その影響は許容範囲かもしれませんが、ヴァイオリンのような
軽い楽器においては音響的に大きな影響を受けてしまいます。
また、ヴァイオリンの構え方では、
糸巻きの部分が重くなってしまうのはバランスが良いないのです。
次に言えることは、ウォームギアのギア間、
または各部品間での「遊び」の問題です。
ギターと違ってヴァイオリンのように
連続的に音を出し続ける場合、
この「遊び」が悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
それは摩擦熱による音量・音質の低下や、
チューニングの乱れです。
もっとも、これは原理的な事柄で、
ヴァイオリンに求める音質によっては、
人によっては無視できる範囲のものでしょう。
さて、最後に挙げるデメリットは、
機械式糸巻きの「固定」に関することです。
機械式糸巻きは、その構造が複雑なために、
トラブルも多くなります。
修理の時に外すこともあります。
修理のたびに、糸倉側面が傷んでしまう可能性が高いのです。
現実に、古いコントラバスの多くは、糸巻きの固定部分に
大きなダメージを持っていることが多いです。
長年の間には、装着する糸巻きのサイズが変わったり、
または形が変わったりするため、そのたびに糸倉の側面に
切削加工が施されてしまうからです。
また、それを固定するネジの部分もあちこち変わるために、
そのたびに穴が空けられたりしてしまうのです。
そのような作業を繰り返す内に、綺麗な糸倉の楽器であっても、
見た目が台無しになってしまうのです。」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「摩擦式については、いかがですか?」
#
(職人さんの答え):
「メリットはシンプルさです。これによって軽く、
そして構造的な「遊び」が無いために、音響的に効率が良いのです。
また、シンプルさは致命的なトラブルを最小限に抑え、
良質な材料と技術で製作された糸巻きは100年近くも
問題なく使用されることもあります。
また、単純さは、長年に渡る楽器の修理の面でも
大きなメリットをもっているのです。
これは実際に古い楽器を修理していると、とても感心することです。
また、チューニングの精度も、この摩擦式のメリットです。
調整が良くできていて、プロの演奏者においてという
前提付きではありますが、摩擦式の糸巻きは
非常に精度の高いチューニングが可能です。
デメリットは、初心者や調子の悪い楽器においては、
まともなチューニング自体が不可能ということです。
これは深刻な問題です。
しかし、一時的にテールピースにアジャスターを付けて
解決するなどの方法もあります。」

#
(Ms.Composer)からの質問:
「では、なぜヴァイオリン属は摩擦式を採用しているのですか?」
#
(職人さんの答え):
「摩擦式の糸巻きは少々のデメリットがあったとしても、
それを上回るメリットが存在すると考えます。
ヴァイオリンの糸巻きのシンプルな構造は、
原始的なのではなく、洗練された構造と言えます。
これまでも、ヴァイオリンの糸巻きについて、
様々なものが試されました。
機械式糸巻きも存在しましたし、摩擦式にネジを加えた構造の
糸巻きも存在しました。
しかし、結果的にそれらの中から生き残ってきたのが、
現在のタイプの糸巻きだったのです。
また、摩擦式糸巻きのテーパも、長年の試行錯誤のなかで
決まってきたものなのです。
このように、ヴァイオリンの糸巻きのシンプルさは、
試行錯誤の上で出来上がった、
「"非常に高度なシンプルさ"と言えると思います。」
以上。
#
ご褒美にちょっと、自己主張を書かせてもらえますので、
この場を借りまして一言。(面倒だから、いつも同じですが。)
「現代音楽を聴きましょう。特に邦人作品を。
すばらしい試みが、あなたのおいでをお待ちしています!」
ありがとう!
By "Ms.Composer." Special Thanks for "Ms.Violinist"
(Ende.(公認)アルチザンハウスKobe日記 2010年5月16日号)
The author is "Ms.Composer."
The verification is "Ms.Composer.
