ヴァイオリンを奏でられる皆様は、楽器の健康状態について、
ちゃんと関心を持たれていらっしゃいますか。

楽器の健康管理(メンテナンス)は、毎日の基礎練習と共に
皆様が日々、ご自分の楽器とお過ごしになる中で、
いつも気遣いをしてあげたいものですね。
早くに楽器の病気(異変)に気が付けば、それだけ
病気からの回復も早くなりますから。

上手に調整された楽器からは良い音が出ますし、
長時間に渡って練習しても、疲れにくいのです。

ヴァイオリンを奏でる皆様向けの
"奏者がすべき保守"についてのレクチャーを
させていただきたいと思います。
それでは、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

$Ms.Violinistのひとりごと-あご当て(エンドピン側から)










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第14回「あご当て」
●"「あご当て」は、後から合流した部品"
「あご当て」とは、その名称が表す通り、
ヴァイオリンを構える際に、あごを乗せる部品です。
今日、一般的なヴァイオリン(モダン・ヴァイオリン)では、
最初から「あご当て」が備わった状態で、楽器店等に
整然と並べられていますが、
現在の形に近いヴァイオリンまでたどりついた頃には、
「あご当て」は、まだ存在していなかったのです。
胸に当てて演奏していました。(*注1)

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「あご当て」は、ヴァイオリンの構えを安定させて、
演奏に専念できるよう、後から発明された部品なのです。
発明者は、作曲家のルイ・シュポーアです。(*注2)

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材質は基本的に木材で、
エボニー、ツゲ、ローズウッドなどがありますが、
糸巻きやテールピース等と同じの木材にするのが、
楽器の見た目の統一感が出て、美しい上に、
メンテナンス時に楽器へのリスクを減らすことが
出来ると私は思います。
また、廉価な楽器に付属している「あご当て」は、
合成樹脂で出来たものがあります。

※注1:
"胸に当てて演奏していた"
「チェロ・ピッコロ」という古楽器などでは、
そのような奏法が用いられていました。
小型のチェロorかなり大ぶりなヴィオラの大きさで、
弦の数は5弦です。
楽器を安定させるために、ベルトで楽器を支えています。
J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第6番の高音域の多用は、
この楽器が念頭にあったのではないかと言われています。


※注2:
ルイ・シュポーア(1784年-1859年)
ドイツのヴァイオリニスト兼作曲家で
指揮者でもあった多彩な作曲家。
本名はルートヴィヒ・シュポーアです。
ヴィルトゥオーゾであり、今日ではヴァイオリンに
当たり前に付いている《あご当ての発明者》です。

多作家で、作品番号が付いているものだけでも
作品番号は150を越えています。
高音域に弱点のあった
当時のクラリネット(=ベーム改良以前)では、
超絶技巧となるクラリネット協奏曲を作曲し、
クラリネットの改良発展に寄与したと言われています。
作曲家兼ヴァイオリニスト兼発明家だったのです。
「あご当て」は、おそらくご自身の演奏上の必要から
発明されたと推測できますね。


●"気づきにくい「あご当て」の緩みとずれ"
「あご当て」は、ヴァイオリンの胴体に金具で
固定されていますが、緩んでくることがあります。
また、「あご当て」を交換したい場合などは、
装着時に注意が必要です。

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「あご当て」の金具は、縦長のネジ式で
小さな穴が空いています。
この穴に専用の工具(金属で出来た細い棒状)を差し込み、
金具を回して胴体を挟み込んで固定します。
工具を使わなくても、クリップを解いたものでも
回すことができます。
ただし、穴に差し込みすぎて胴体に傷を付けないように。
それは専用の工具でも、クリップを解いたものでも同じです。

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また、金具を回して胴体を挟み込んで固定する際には、
決して強く締めすぎないこと。
締めすぎると、側板に歪みが出たり、
最悪の場合、側板や柔らかい表板を割ってしまう事故が
希に起こります。
何事も"過ぎたるは及ばざるがごとし"なのです。

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しかし、初心者で加減が分からない者には、
「あご当て」に触れられないのかというと、
そうではありません。
ちゃんと、防止策を頭に入れておけば大丈夫です。
最も安全な締め方は、できるだけ指の力だけ回し、
ぐらつきが小さくなった時点から工具を差し込んで
最後の"決め込み"の分だけ回します。
「あご当て」が、ぐらつかない程度まで締められれば、
それで良いのです。
できれば、最初は師事なさっておられる先生と一緒か、
楽器に精通している楽器工房の職人さんに
付いてもらうのがベストですね。


●"「あご当て」が雑音の原因となる"
「あご当て」とテールピースが接触している場合、
特定の音の響きを止めてしまい、
それが原因で、楽器の響きのバランスを崩し、
変な音が出る場合があります。
これは、くり返し楽器を使用しているうちに、
「あご当て」の位置がずれることで起きるトラブルです。
テールピースと接触しているようでしたら、
「あご当て」の位置を動かしてください。

毎日の基礎練習の際には、
どうぞ"「あご当て」の位置チェック"をお願いします。
※この種の雑音は、原因が分かりにくいのでご注意です。

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また、オーバー・テールピースタイプの「あご当て」
(=テールピースを跨ぐタイプ)を装着していて、
「あご当て」とテールピースが接触してしまう場合には、
あご当ての接触する部分を削り取る調整をします。

この調整は、慣れた方ならご自身でも出来ますが、
できれば、楽器工房に持ち込んでいただきたいです。

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ご自身で調整をなさる場合は、
木工用やすり、サンドペーパーで削りましょう。
ある程度削ったら装着し、まだ接触しているなら
削りの作業を繰り返して、接触しなくまるまで
様子を見ながらこの作業を繰り返します。

繰り返して申しますが、この調整は、充分に
慣れた方が、ご自身の責任で行ってください。


皆様が素敵なViolinライフを過ごされますように。

(Ende.レクチャー:ヴァイオリニストがすべき保守
 (第14回) 「あご当て」)
The author is "Ms.Violinist."
The verification is "Ms.Composer."


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