ヴァイオリンを奏でられる皆様は、楽器の健康状態について、
ちゃんと関心を持たれていらっしゃいますか。

楽器の健康管理(メンテナンス)は、毎日の基礎練習と共に
皆様が日々、ご自分の楽器とお過ごしになる中で、
いつも気遣いをしてあげたいものですね。
早くに楽器の病気(異変)に気が付けば、それだけ
病気からの回復も早くなりますから。

上手に調整された楽器からは良い音が出ますし、
長時間に渡って練習しても、疲れにくいのです。

ヴァイオリンを奏でる皆様向けの
"奏者がすべき保守"についてのレクチャーを
させていただきたいと思います。
それでは、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。


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第2回「駒について」
 (2)"駒の厚さと高さについて"

"駒"。
「それは目立つけれども、
 それに相応しい程には、関心を持たれてはいない。」

駒は、ヴァイオリンという楽器の中では、
表板の中央部分、大変目立つ位置にありながら、
それに相応しい関心を持たれることが
思いの外、少ない部品(パーツ)だと私は思います。
駒には、"弦の振動を表板に伝える"という
大切な役目があります。
この調整の具合で、楽器がとても良く響いたり、
反対に、まったく響かなかったりするのです。

$Ms.Violinistのひとりごと-駒について(角度1)











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さて、駒の厚さや高さと、ヴァイオリンの音質には、
密接な関係があります。
一般的に弱い楽器(*注1)には厚みの薄い駒、
強い楽器(*注2)には厚みのある駒と言われますが、
あくまで一般論であり、全てのケースに当てはまるとは
言えません。

しかし、時々、ほとんど調整されていないような分厚い駒を
見かける事があります。そのような駒には制作工房で
厚みを削って調整することが必要となります。

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高さについても同様で、一般的には楽器の隆起
(表板・裏板の膨らみ)の"高い楽器には背の低い駒"、
隆起の"低い楽器には背の高い駒"が良いと
されています。

しかし、これらにも限度があり、背の高い駒は、
確かに弦の張力が増すために、力強い音が出るのですが、
ハイポジションが押さえにくくなります。

また、背の低い駒は、弦の張力が減って、ハイポジションが
押さえやすくなるのですが、一方では、音に張りがなくなります。

以上のように、駒の厚さと高さには、皆様がお持ちの
ヴァイオリンの形状毎の相性があります。
新たに楽器をご購入の際には、制作工房の熟練した専門家に
お願いして、それぞれの楽器に適した駒に調整してもらう
必要があります。

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また、これは余談ですが、大手の楽器店(制作工房以外)で
展示販売されているヴァイオリンは、駒が未調整のものも
見当たります。このような場合は、必ず制作工房に持ち込み、
駒を始めとする各部の調整を行った上で、お使いになって
ください。

"楽器店で販売されている楽器"が、
必ずしも、"すぐに使用できる物ではない"ことを
ご認識いただきたいと思います。

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注釈の説明:
*注1:"弱い楽器"
    "年代を重ね、繰り返し施されたメンテナンスのために、
    木材が薄くなっている楽器"を表しています。
    また、バロック期の名工のレプリカ(模倣)楽器で、
    モダン楽器に比べて、胴体の膨らみの小さい華奢な
    (バロック)ヴァイオリンもこれに含まれます。
    "粗悪な造りで、最初から構造に問題がある楽器"では
    ありません。

*注2:"強い楽器"
    新作楽器、およびモダン楽器の特徴である
    胴体の膨らみの大きいものを表しています。
    正しい知識を持った制作工房の専門家による
    手工芸の楽器、
    あるいは造りの良い工場製の楽器が、
    これらに当たります。

皆様が素敵なViolinライフを過ごされますように。


(Ende.レクチャー:ヴァイオリニストがすべき保守
 (第2回) 「駒について」(2))
The author is "Ms.Violinist."
The verification is "Ms.Composer."


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