さて、ここでサラサーテについての逸話をお話したいと思います。
青年時代に小さなコンサート・ホールで演奏会を開催しました。
舞台と客席が同じ高さの平戸間の床に、客席を並べただけの
至って質素な会場です。開演しても、明かりを弱くしないので、
奏者からは、観衆の様子が直接に目に飛び込んでくるでしょう。
夏の夕べで、やや気温が高い上に、当時は空調のない時代。
演奏途中でヴァイオリンの弦が延びて、音がずれてしまわないか
サラサーテは気になっておりました。
さらには、ピアノの調律が甘く、サラサーテは本番前から
ピリピリしておりました。
さて、プログラムの第1曲目は、サラサーテ自作の
「ミニョンのロマンス(6/8拍子)とガボット(2/4拍子)作品16」。
ピアノの序奏が始まりますが、耳の良いサラサーテは、
その音の酷さに辟易していました。
やがて、ピアノの序奏が終わり、サラサーテは、
ロマンスの6/8拍子のシチリアーナ風の旋律を奏で始めました。
ピアノの伴奏は和音を打つ程度のもので、サラサーテの
この時代の他の作品と同じく、ヴァイオリンの技巧を披露するもの
でした。シチリアーナの叙情性溢れるソロに続いて超絶技巧を
演ずる部分への差し掛かったサラサーテがいきなり演奏を
中断してしまいます。
サラサーテが演奏を中断してしまった理由は、何だと思われますか?
ヒント:
「私なら、頑張って続けると思います。」(笑)

それは、
「最前列の聴衆が盛んに動かす扇子が気になった」です。
サラサーテは、不愉快な事が続き、苛立ちが頂点に達して
おりました。観衆が入った会場の気温はひと息で、暑さは
さらにひどくなり、サラサーテも滴る汗が止まりません。
ピアノの序奏の間に、ふと客席に目をやると夏にも関わらず
フルドレスで正装した豊かな胸のご婦人が、汗をハンカチで
拭いつつ、扇子で動かしておられました。
やがて、サラサーテはヴァイオリンを構え、ソロに入りましたが、
どうしたわけか、そのご婦人が、いえ、その動かす扇子が
気になったしかたがありませんでした。
また、その扇子の振りの速さが、丁度、演奏中のロマンスの
テンポと一致してしまうのです。
ロマンスは6/8拍子ですが、夫人の扇子は2/4拍子。
微妙にリズムの頭が合ったり、ずれたりしてしまいます。
我慢の限界を超えたサラサーテはこう言いました。
『そこのご婦人。すみませんが2/4拍子で扇子を使うのを
やめていただけませんか!
こちらは、6/8拍子の曲を弾いておりますので!』
その後、どうなったかは伝わっておりません。
けれども、想像したくないですね……。
クラシック音楽は決して、タキシードやナイトドレスの
着用を求めておりません。ご来場の際は、他のお客様を
ご不快にさせない程度であれば、ラフな格好でお越し
ください。
「どうぞ、お気軽にお越しください。
そして、音楽を楽しんでお帰りくださいませ。」
でも、ひとつだけお約束がございます。
《演奏中のお喋りはお控えになってくださいね。》(笑)

(Ende.サラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』作品20(第3夜))
The author is "Ms.Violinist."
The verification is "Ms.Composer."

青年時代に小さなコンサート・ホールで演奏会を開催しました。
舞台と客席が同じ高さの平戸間の床に、客席を並べただけの
至って質素な会場です。開演しても、明かりを弱くしないので、
奏者からは、観衆の様子が直接に目に飛び込んでくるでしょう。
夏の夕べで、やや気温が高い上に、当時は空調のない時代。
演奏途中でヴァイオリンの弦が延びて、音がずれてしまわないか
サラサーテは気になっておりました。
さらには、ピアノの調律が甘く、サラサーテは本番前から
ピリピリしておりました。
さて、プログラムの第1曲目は、サラサーテ自作の
「ミニョンのロマンス(6/8拍子)とガボット(2/4拍子)作品16」。
ピアノの序奏が始まりますが、耳の良いサラサーテは、
その音の酷さに辟易していました。
やがて、ピアノの序奏が終わり、サラサーテは、
ロマンスの6/8拍子のシチリアーナ風の旋律を奏で始めました。
ピアノの伴奏は和音を打つ程度のもので、サラサーテの
この時代の他の作品と同じく、ヴァイオリンの技巧を披露するもの
でした。シチリアーナの叙情性溢れるソロに続いて超絶技巧を
演ずる部分への差し掛かったサラサーテがいきなり演奏を
中断してしまいます。
サラサーテが演奏を中断してしまった理由は、何だと思われますか?
ヒント:
「私なら、頑張って続けると思います。」(笑)

それは、
「最前列の聴衆が盛んに動かす扇子が気になった」です。
サラサーテは、不愉快な事が続き、苛立ちが頂点に達して
おりました。観衆が入った会場の気温はひと息で、暑さは
さらにひどくなり、サラサーテも滴る汗が止まりません。
ピアノの序奏の間に、ふと客席に目をやると夏にも関わらず
フルドレスで正装した豊かな胸のご婦人が、汗をハンカチで
拭いつつ、扇子で動かしておられました。
やがて、サラサーテはヴァイオリンを構え、ソロに入りましたが、
どうしたわけか、そのご婦人が、いえ、その動かす扇子が
気になったしかたがありませんでした。
また、その扇子の振りの速さが、丁度、演奏中のロマンスの
テンポと一致してしまうのです。
ロマンスは6/8拍子ですが、夫人の扇子は2/4拍子。
微妙にリズムの頭が合ったり、ずれたりしてしまいます。
我慢の限界を超えたサラサーテはこう言いました。
『そこのご婦人。すみませんが2/4拍子で扇子を使うのを
やめていただけませんか!
こちらは、6/8拍子の曲を弾いておりますので!』
その後、どうなったかは伝わっておりません。
けれども、想像したくないですね……。
クラシック音楽は決して、タキシードやナイトドレスの
着用を求めておりません。ご来場の際は、他のお客様を
ご不快にさせない程度であれば、ラフな格好でお越し
ください。
「どうぞ、お気軽にお越しください。
そして、音楽を楽しんでお帰りくださいませ。」
でも、ひとつだけお約束がございます。
《演奏中のお喋りはお控えになってくださいね。》(笑)

(Ende.サラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』作品20(第3夜))
The author is "Ms.Violinist."
The verification is "Ms.Composer."