お客さまを単品売りで帰したら、
それはかえって申し訳ない。
大手家具店で働きだした私は、いつの頃からか
こんな考え方を持つようになりました。
本当にお客さまのためを思ったら、プラスアルファの
ご提案をせずにいられない・・・
ややもすると積極的にご提案することを躊躇してしまう
気の弱いところがまだまだありましたので、
最初のうちは自分にそう言い聞かせながら
接客をしていたように思います。
例えば、デスクを買いに来たお客さまに、
デスクだけを販売するのではなく、
デスクチェアやスタンド、敷物、絵の飾り方など
役にたつ情報は必ずご紹介しました。
第20話でも少し触れましたが、
ソファでさらに具体的にお話します。
ソファを買っていただいたお客さまには、
必ずカーテンや敷物もご提案しました。
ソファを買いにきたわけですから、
「カーテンも見てください」と言うと
断わってくるお客さまも当然いました。
しかし、そんなときにもにっこり笑顔で
「お決めいただいたソファは
20~30年はお使いいただけます。
一方カーテンの寿命はせいぜい10年です。
いずれ買い替えます。その時に
このソファにピッタリ合うカーテンをかけられると
お部屋は見違えるようにあか抜けるんですよ。
お部屋が野暮ったくなるのも、あか抜けるのも、
カーテン次第です。
だから、いずれ買い替えるときのために、
カーテンの選び方をお教えしますので、
ぜひ覚えて帰ってください」
こうお伝えすると、
ほとんどのお客さまはカーテン売り場に
来てくださいました。
そして、たくさんあるカーテンの中から、
購入したソファにぴったりのカーテンを3枚ほど
お選びし、ソファの前に持って行って広げて見せます。
「こちらのカーテンは、柄の中にソファと同じ色が
使われています。このように同じ色がリピートされると
統一感が生まれるのですよ」
「次のカーテンは、ブルーベースでソファの色と
相性が良く、ソファを引き立ててくれます。
そして、さらに素敵にするには、
カーテンと同じ色系のクッションをソファに
置いていただくと、空間に一体感が生まれて
洗練されるんですよ」
お客さまは
「わぁ~、どれも素敵ね~。
カーテンひとつでこんなに違ってくるのね。
ウチのカーテンもう色も焼けてきたし、
この際だから買い換えようかしら」
そう言ってカーテンを追加で購入して下さる方が
3組に1組以上はいらっしゃいました。
カーテンをお見せしなければ、
まず買っていただけなかったでしょう。
そして、数年後にカーテンを買い変えるときは、
ソファとの相性など考えずに選んでしまい、
あか抜けない部屋になってしまう可能性も
おおいにありました。
このように、カーテンの他にも、
絨毯の選び方、
絵やインテリア小物の選び方、
照明の選び方、
暮らしやすい家具の組み合わせや
家具のレイアウトなど、
お客さまの役に立つと思うことは出し惜しみせずに
できる限りお伝えしました。
買う買わないということより、いずれ買うときのために
知っておいて欲しいという気持ちで話しますと
お客さまも警戒せず喜んで説明を聞いてくださいます。
しっかりと説明を聞くと、欲しくなるのが人というもの。
お客さまが聞くも聞かないも、売る側のこころの持ち方
次第だということを改めて実感する日々でした。
…つづきます。明日も読んでくださいね。
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