いつも、お洒落な飲み友達が、
今日は何だか似合わないネクタイをしていた。
「あれ、今日のネクタイらしくないわね」
日頃軽口たたき合っている仲なので、
正直に言ってしまった。
いつもだったら笑って対応する彼が
この時ばかりは真顔で答えた。
「そんなこと言わないでよ、
だいちゃんがプレゼントしてくれたんだから」
゛だいちゃん゛というのは、離婚後に遠く離れて暮らしている
彼の一人息子のこと。
だいちゃんがお父さんを喜ばせようと一生懸命
ネクタイを選ぶ姿が目に浮かんだ。
「あっ、ごめん、ひどいこと言っちゃった・・・・
いいね、とても素敵ね。
世界で一番すてきなネクタイだね」
慌てて訂正して謝ったが、申し訳ないことをしてしまった。
父親の愛を知らない私・・・・
父が子を思う気持ちに触れて胸がジーンときた。
そして、
彼のネクタイは本当に世界一
すてきで、光輝いて見えた。
父を思う息子の健気さと、一緒に暮らせない父親の