○血管年齢はお風呂で若返る○
血管が老いると、まず硬くなり、血液の通り道が狭くなって流れが悪くなります。
「動脈硬化」と呼ばれる状態です。
進行すると血圧が上がり、血栓ができやすくなり、
心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気につながるおそれがあります。
血管から始まった老化は、やがて全身に広がっていきます。
でも、ご安心を。入浴が血管の老化のスピードをゆるやかにしてくれます。
それには「一酸化窒素(NO)」という物質を体内で増やすことが有効なのですが、
湯船で10分温まるだけで血流が大きく改善され、
NOの産生が促進されることが明らかになっています。
入浴前後の血液を比較した実験でも、
入浴後には血中NO濃度が増加することが確認されています。
●血流を促進して動脈硬化の進行を抑える
NOの働きは、血管を広げて血流を促進し、
血管のしなやかさを保つことで動脈硬化の進行を抑えることです。
さらに、血管内の炎症を抑えたり、血栓ができにくくしたりする作用もあり、
その結果、プラークの悪化や破裂を防ぐことにもつながります。
また、湯船に浸かって体が温まると、血管が一時的に広がり、
お風呂から上がって体が冷めてくると血管は自然に収縮します。
この「拡張」と「収縮」のくり返しは、血管にとってストレッチのような刺激となり、
しなやかさを保つのに役立ちます。
これほど手軽で、医学的にも信頼性のある健康法は、そう多くはないでしょう。
●自律神経を調整するのも温熱作用
温かいお風呂のすばらしい点をもう1つ挙げるとしたら、
それは自律神経のバランスが自然に整うということです。
自律神経は、呼吸や血圧、体温、消化といった生命活動を
無意識にコントロールしている神経で、以下の2つがバランスを取っています。
・交感神経…活動モードを担う
・副交感神経…休息モードを担う
日中や緊張時には交感神経が、
夜間やリラックス時には副交感神経が優位になるのが理想的なバランスです。
ところが、ストレスや不規則な生活といった交感神経を優位にする要因が
現代社会にはあふれています。
すると、副交感神経への切り替えがうまくいかず、
眠れない、疲れが取れない、胃の調子が悪い、気分が落ち込みやすいなど
さまざまな不調が出てきます。
一方で、副交感神経が優位になりすぎるのもよくなく、
交感神経と副交感神経が状況に応じて切り替えられる状態が大切なのです。
それを助けてくれるのが、温かいお風呂です。
多くの研究では、40℃のお湯に10分ほど全身浸かることで副交感神経の活動が高まり、
心拍数が安定するなどのリラックス反応が確認されています。
つまり、体を温めるだけで、交感神経から副交感神経のスイッチが入り、
自律神経のバランスが整いやすくなるのです。
●運動でもなく、マッサージでもなくお風呂が一番
運動をすれば血流がよくなり、一酸化窒素も増やすことができます。
運動がいいことは、みんなわかっています。
ランニングなどの運動の血流改善効果は非常に高いのですが、
体内には疲労の原因物質が産生されてしまいます。
入浴では、そうした変化はほとんど見られません。
ひざや腰が痛いと、運動はきついですよね。
運動をすると、心拍数が上がります。
心拍数が上がるということは、血流がよくなるということです。
でも、体が痛いときや、高齢の方は運動がきついでしょう。
