◆放置すると危険な“慢性腎臓病”◆
慢性腎臓病は、腎臓になんらかの障害が起きていたり、
腎臓の働きぐあいが一定レベル以下になったりしたまま、3ヵ月以上続いている状態です。
糖尿病、高血圧などの生活習慣病が深く関係しており、
放置しておけば徐々に腎臓の働きが弱くなっていきます。
主な原因には、次のようなものがあります。
●糖尿病が原因で起こる糖尿病性腎症
●高血圧が原因で起こる腎硬化症
●糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などの重なり
●遺伝性が高い多発性囊胞腎
●糖尿病性腎臓病
慢性腎臓病は、急性腎障害にくらべ、患者数が多いにもかかわらず放置されがちです。
自覚症状に乏しく、そもそもかかっていることに気づいていない人が多いうえ、
尿検査などで異常を指摘されても、
切迫感がなくそのままにしているという人も少なくありません。
慢性腎臓病は放っておけば確実に進行していきますが、
ただちに命にかかわるわけではありません。
生活習慣との関係が深いだけに、
進行を止めたり、遅らせたりすることは十分に可能です。
▼慢性腎臓病の診断基準
(1)尿異常、画像診断、血液、病理での腎障害の存在が明らか。
とくにたんぱく尿(糖尿病の場合は微量アルブミン尿)の存在が重要
(2)GFR(糸球体濾過量)が60未満
(1)(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する
●GFRの値
腎臓の働きぐあいを示すのがGFRの値で、血清クレアチニン値から計算します。
90を上回っていれば正常、
下回っていても60を超えていれば「まあまあ働いている」といえます。
●たんぱく尿(アルブミン尿)の程度
尿にたんぱく質やアルブミンが含まれている場合には、
腎障害が起きている可能性が高いといえます。
故障をかかえながら無理に働いている状態であり、
その状態が3ヵ月以上続くようなら、GFRの値にかかわらず慢性腎臓病とされます。
進みぐあいによって食事の内容や使用する薬を替えたほうがよいこともありますので、
自分が今、どの段階にあるかを把握しておきましょう。
ただし、数値のわずかな差で腎臓の状態が大きく変わるわけではありません。
「ギリギリ軽度だからたいしたことない」などと安心するのは禁物。
そのときの検査結果による進行度・重症度だけで判断するのではなく、
変化のしかたを確かめながら、適切に対応していくことが重要です。
慢性腎臓病の進行度は、GFRの数値から
G1、G2、G3、G4、G5の5つのステージ(病期)に分けられます。
重症度が増すにつれ、透析治療が必要になるリスクや、
心臓病などを発症するリスクが高まることがわかっています。
また、たんぱく尿の程度と組み合わせることで、重症度が分けられます。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、
血管の障害をもたらしやすいからこそ、放っておけないのです。
高血圧、糖尿病などによって傷つくのは、腎臓の血管だけではありません。
全身の血管がむしばまれていきます。
慢性腎臓病をまねくような生活は、心臓病や脳卒中などの
「心血管病」が起きるリスクを高める生活でもあるのです。
慢性腎臓病はかなり進行するまで自覚症状は現れません。
症状がないからと放置していると、ある日突然、
次のような命にかかわる事態が生じる危険性もあります。
●脳卒中(脳梗塞・脳出血)
・頭痛やめまい。
・意識障害、記憶障害。
・麻痺 、感覚やバランスの異常。
・言葉の異常。
・見え方の異常。
●狭心症
・階段をのぼるとき、急いで歩いたときなどに胸が痛くなるが数分間でおさまる。
・胸の痛みで目が覚める。起床後、洗面のときなどに胸の痛みが起こる。
●心筋梗塞
・動作や時間に関係なく、突然、激しい胸の痛みが起こり15分以上続く。
・長引く胸痛とともに、不安感、動悸 、息切れ、冷や汗、めまい、脱力感に襲われる。
また、腎臓本来の働きであるホルモン分泌が低下していくため、
赤血球が十分につくられず、貧血になったり、骨がもろくなっていったりもします。
軽度でも慢性腎臓病とわかったら、進行をくい止めるために
今すぐ対策を始める必要があります。
あなた自身の取り組みが、あなたの腎臓はもちろん、
すこやかな生活を守るために重要になります。