◆中年パラサイト・シングル◆
もうすぐ終わろうとしている平成。
バブル崩壊で経済が長期間停滞し、
地震や豪雨など災害が相次ぎました。
年金や医療といった社会保障制度への不安も高まり、
不透明感が増した時代。
そんな中で家族のあり方も大きく変わってきました。
一言で言えば、「多様化が進んだ」のです。
○○世代と語れるのは昭和生まれまで。
昭和の若者はみんな中流で似たような考え方を持ち、
モデルとなる家庭像を語れました。
平成の30年間で格差が広がり、
もはや一言では語れなくなりました。
結婚して子どもをつくり家庭を築く人はまだ多数派ですが、
そこからこぼれ落ちる人は増えてきています。
若者の就職が難しく、給料も上がりにくいなか、
親と同居してリッチに暮らす20代の未婚者は、
まるで親に寄生(パラサイト)しているよう。
それが可能だったのは、親の世代はほとんど正社員で、
持ち家があったから。
経済的に余裕があり、稼げない息子や
結婚前の娘を支援するのに抵抗感はなかったのです。
20代のうちは親に頼っていても、
いずれは自立して自分の家庭を築くと期待されていたはず。
ですが、現実はそうはなっていない。
30~40代の中年になっても、結婚しないまま
親と同居し続ける人たちがたくさんいます。
総務省統計研究研修所がまとめた推移
「35~44歳の親同居未婚者」
80年には39万人しかいなかったが、
2016年には288万人まで急増している。
35~44歳人口に占める割合も、
2.2%から16.3%に上昇。
6人に1人が該当するまでになっている
こうした親同居で未婚のアラフォーは
「中年パラサイト・シングル」と呼ばれています。
これから20年後、彼らは50~60代になり、
寄生する親は80~90代を迎えます。
いまは親が年金をもらっているので
子どもの収入が少なくても、
とりあえず生活は保てています。
親の介護も同居の子に頼ることができます。
ただ、親が亡くなる日は必ず来ます。
いつまでも親の年金や貯金、
持ち家に頼り続けることはできない。
「中年パラサイト・シングル」には正社員もいますが
2~3割は不安定な非正規雇用。
約1割は失業者。
親の死後を見据えて、
自分で十分な蓄えをしている人は少数派。
親の貯金を使い果たせば
生活保護に頼るケースも考えられます。
90年代は明るく若いパラサイト・シングルで始まりましたが、
親が亡くなったら生活できないという
中年パラサイト・シングルとなって、平成が終わります。
この危機的状況を示す言葉が「2040年問題」
40年には親世代の大半が亡くなり、
残された高齢の子どもたちが、
にっちもさっちもいかなくなる状態がやってくるのです
親が死んだときに、
60歳を超える未婚の子どもたちはどうなるのか。
いまさら正社員として雇ってくれるところはなく、
頼れる親族もほかにいない。
中年パラサイト・シングルの多くが
「下流かつ孤立老人」になると予測されています。
「下流老人」とは
生活保護基準に相当するような
貧困状態で暮らさざるを得ない人たち。
「孤立老人」は
社会や身内とのつながりが切れて
誰からも支援してもらえない。
こうなると、「命の最後の砦」とされる
生活保護に頼るしかないのです。
厚生労働省が1月9日に発表した調査では
昨年10月時点で生活保護を受けてい
る65歳以上の高齢者世帯は88万2001世帯。
過去最多を更新しており、
生活保護世帯全体の54.1%を占める。
いまでも生活保護を受ける高齢者が多いのに、
中年パラサイト・シングルが
65歳以上になればどうなるのか。
年金をもらい続けるために親の死を隠す、
生きていくために刑務所に入るといった事件が
ニュースにもならないほど「当たり前」になってくる。
つまり、いまは悲惨なケースとして報じられていることが
ニュースにならない規模、
発生する社会になるというのです。
平成を振り返るとパラサイト・シングルのほかにも
「ニート」や「ロストジェネレーション」といった
キーワードが浮かびます。
いったん正社員になるコースから外れると、
安定した仕事には就きにくい。
ここ数年の大学新卒者の就職市場は
空前の売り手市場で
かつての「就職氷河期」の大変さは忘れ去られている。
当時、100社以上受けても
内定がもらえない学生は珍しくなかった時代。
大手企業は新卒の一括採用をいまでも重視しており、
途中から入ることは難しい。
社会に出るときに不景気で損をした世代は
その後もずっと不利益を被っている。
中年パラサイト・シングルも
そうした世代の人たちなのです。