パッヘルベルのカノン、ショパンの別れの曲、ドヴォルザークの新世界より、スメタナのモルダウ、エルガーの威風堂々、ホルストのジュピター…。
クラシックには挙げればきりがない程の名旋律がありますが、
この曲の美しさ、品格はやはり群を抜いているでしょう。
J.S.バッハの『G線上のアリア』は、管弦楽組曲第3番の第2曲アリアを、ドイツの名ヴァイオリニスト、アウグスト・ウィルヘルミ(1845-1908)が、ヴァイオリンのG線のみで弾けるように編曲したことがきっかけで ヴァイオリン独奏曲としても、いっそう広まり有名になった曲です。
G線は4本あるヴァイオリンの弦の中でも、一番音の低い弦で、
柔らかさと力強さを併せ持つ、豊かな音色が特徴です。
ウィルヘルミはこれを活かして、アリアを魅力的な独奏曲へと仕上げたのです。
バッハは1717年から1723年、年齢にして32歳から38歳頃までの間、ケーテン地方を統治するレオポルド公の宮廷楽長を務めていました。
レオポルド公は若年ながら優秀な宮廷楽団を抱え、 自身も弦楽器やクラヴィアを器用に弾きこなす音楽通でした。
バッハはこの楽団を指導しながら、教会音楽とは趣きの異なる、
管弦楽曲や、協奏曲、室内楽曲などを自由に作曲しました。
この時代がバッハのケーテン時代と呼ばれています。
4曲あるバッハの管弦楽組曲は、どれもこのケーテン時代に書かれました。
規模の大きな序曲で始まり、様々な古典舞曲を並べるのがこれら組曲の特色です。
こうした組曲の形式は、バッハの時代に好まれ、多くの作曲家たちが用いていました。
管弦楽組曲第3番の編成はオーボエ、トランペット、打楽器、弦楽部。
楽曲は1.序曲、2.アリア、3.ガヴォット、4.ブーレー、5.ジーグで構成され、 第2曲アリアは通常の弦楽器と通奏低音のみで演奏されます。
第1ヴァイオリンが奏でる主旋律は、冒頭からしばらく一音を保ち、これに寄り添う第2ヴァイオリン、内声を豊かに響かせるヴィオラ、そして下降するチェロの低音が絶妙なアンサンブルを見せ、 聴く者を清浄で崇高な世界へと誘っていきます。

