東京出張の機会があったので、前から訪れてみたいと思っていたオーディオ屋さん、「アリストクラト青山」に足を運びました。

季刊誌『Stereo Sound』でも紹介されていましたし、そのホームページは豪華そのもの。
大阪の日本橋に散在するオーディオ屋さんとは、設置してある機器も雰囲気も全く異なり、まさに「Aristocrat(貴族、貴族趣味)」に、前から憧れていました。
関係ないですが、私が大学を卒業するときの論文は『Aristocrat:大衆独占時代を凌駕するための貴族主義的実存論』だったのですが、私にとってAristocratは「アリストクラート」と読む方がしっくりきたりはします。

銀座線表参道駅より徒歩5分ほどの場所にあるアリストクラト、場所を知らなければ、ふらっと訪れることはない場所に存在していました。
事前にメールで訪問試聴のお願いをしていましたので、「サロン」と言う呼び名がぴったりの試聴ルームに迎え入れて頂きました。

その偉容を誇るavantgarde(アヴァンギャルド)のTRIO+BASSHORN、バスホーンをアヴァンギャルド推奨の6基で展示して聴ける所はなかなかないらしいです。


このスピーカーシステムだけでも定価は1,890万円なのですが、当然それに見合った機器で音を出しますので、システムトータルではとんでもない値段なんですね。
CDのシステムはdCSのScarlatti Systemですが、アップサンプラーはなかったです、でもそれだけで定価は739万円です。
プリアンプはマーク・レヴィンソンが作った何とかと説明頂きましたが、ちゃんと覚えていなくて...。
パワーアンプは既になくなったメーカーですが、日本のGlass Masterと言うメーカーのSD-2KRという機器だそうで、管球式のモノラル・パワーアンプですが、セットで462万円です。
ただ扱い商社も倒産してしまって、メンテナンスも出来ないため、このパワー・アンプは売るに売れないと仰っていました。
勿論、ケーブル類も超弩級のものを使用していますので、システム総額が一体幾らになるかは想像もつきません...。
まずはこのシステムで持参したCD、ヴァント指揮北ドイツ放送響のブルックナーの第8交響曲、フィナーレを聴かせて頂きました。

とてもワイドに、そして奥深く形成される音場には、その圧倒的な偉容を誇るスピーカーシステムの存在が嘘のような自然さがあります。
ただ、音場の静寂感、見通し感、そして透明度や潤い感にはその価格に見合ったものを感じる事が出来ず、金管群の輝かしい咆哮に対して、その存在感の極めて薄い弦楽陣とのバランスの悪さも否めませんでした。
しかしそれは後で気がつくのですが、再生音量を絞っていたからで、それも再生音量をどの程度にするかを尋ねられた際に、「爆音派ではない」と伝えたからで、実際の実力は上記とは異なっていた事を後に理解します。

さて、折角なので、世界限定生産100セットのKEF、MUONも聴かせて頂きました。


このスピーカー・システムは1,950万円ですが、世界に100セットしかありませんから、プレミアム価格になっているかも知れません。
お店の方の話だと、最初は全然鳴らなくて、KEFの技術者に来て貰い、内部のネットワークも全てスペシャルなものに換装されているらしいです。
同じソースで試聴をさせて頂きましたが、こちらも最初は音量を絞り気味だったので、「う~ん(疑問)」と言う疑問符だらけ...。
店員さんが直ぐにそんな私の反応に気がつき「いつもの再生音量で」とボリュームを上げた途端、それは生き生きと鳴り出しました。
オールホーン・システムのアヴァンギャルドと異なり、コーン・スピーカーのMUONは、私には馴染める音でしたし、潤い感や木質系の感触もしっかりと感じられました。
しかし音場の表現力は圧倒的なアヴァンギャルドと比べると聴き劣りがしますし、スピーカーが鳴っている事を意識もします。

他のCDを試聴しようと思いましたが、再度、アヴァンギャルドで聴くことにしました、今顔は音量をそこそこ上げてです。
すると、弦と管のバランスもすこぶる良くなり、木管楽器の存在感もすっきりとしていながらとても高まります。
爆音という範囲では決してない再生音量だと思いますが、やはり大きなスピーカー・システムを聴くときには、それなりの音量で再生しないと、その実力は分からないのだと、初めて認識しました。

最後にモザイク四重奏団のハイドンの五度の第1楽章を聴かせて頂きました。
これは先ほどのブルックナーを再生する際と同じ音量だったので、正直少し大きめの音に思われましたが、各奏者の存在感、音場の自然さ、透明度、潤い、木質系の肌触り、そのどれをとっても超一流の再生でした。
ただ、やはりオール・ホーンのスピーカー・システムなので、聴取位置にはややシビアであると感じられ、しっかりと真ん中で聴くのと、すこし中心からずれて聴くのとでは感触が異なります。
しっかりと真ん中で聴いたときの素晴らしさは、今まで再生音楽を聴いた中では最高の音響であったと思います。

滞在時間は1時間半ほど、そのうち1時間近くをアヴァンギャルドとMUONでのブルックナーの第8交響曲のフィナーレを丸ごと聴くと言う試聴をさせて頂きましたが、嫌な顔一つされず、しかも、購入することなど全くないと分かっていながら心ゆくまでオーディオを楽しませてくれたアリストクラトさん。
とても良い経験をさせて頂きました。