(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

80.3.「AはBだ」の英訳3

 

「AはBだ」の英訳においては、特に主語の後ろに来る「は」という助詞には注意すべきです。

 

(1)その本は買わない。

 

という文を英訳する場合、主語が「その本」ではないとすぐに気付く人はいいのですが、「その本」を主語にして、

 

(2)*The  book doesn't buy.

 

などと英訳する学習者は、今一度日本語を見直すことから始める必要があります。

いろいろな方法がありますが、いきなり英訳するのではなく、英訳しやすい日本語に言い換えてから

英語を考えてみるのも1つの方法です。(1)の場合、

 

(3)私はその本は買わない→私はその本を買わない

 

というように、主語(厳密に言えば動作主)を補って英訳します。

 

(4)I don't [won't] buy the book.

 

もっとも、「を」ではなく「は」という助詞を使用しているからには、「その本」が強調されているので、

話し言葉なら、the bookを強調したり、“Ii is not the book that I will buy.”など強調構文を使う必要があるかもしれません。

 

次の文はどうでしょう。

 

(5)象は鼻が長い。

 

これも、言語学や日本語学でお馴染みのいわゆる「象鼻文」で、特に三上章(1960)をはじめ多くの議論がありますが、

英訳する際には、次のように考える必要があります。

 

(6)象と言うのは、長い鼻を持っている。

(7)An elephant has a long nose.[Elephants have a long nose.]

 

通常、新情報を表わす不定冠詞から文が始まることはあまりありませんが、「総称」を表わす際には許されますし、

総称を表わす複数形や定冠詞のtheでも可能です(なお、象の鼻はtrunkとも言います)。

 

他にも、次のように言い換えて考えられます。

 

(8)象に関していえば、それは長い鼻を持っている。

(9)As for elephants, theis nose is long.

(10)象の鼻は長い。

(11)Elephant's nose is long.

 

「AはBだ」の英訳の際、特に「は」という助詞に注意する必要があります。

英訳する時の主語の後ろについているとは限らないので、

主語(特に動作主)を考えながら英訳することが重要です。

 

 

参考

三上章(1960)『象は鼻が長い―日本文法入門 (三上章著作集)』くろしお出版。