75.I'm going to shave. Bring me a basin of water

(a)あの戦争も終わって(1945年8月15日)、秋には占領軍が東京に来て、制服姿の軍関係者が都内の各所にプレハブ式の住宅か、洋館のある焼け残った日本家屋に住み始めた。妻を米国本土から呼び寄せ、家庭生活を始めたわけだが、お手伝いさんとして、日本人の house maid、家によっては更に house boy を雇っていた。お金のためにこうした仕事をした人のほかに、英語を身に付けたくて働いた若者も多かったと聞く。このメイドをした経験のある当時青山学院の女子大学生だった人から聞いた、実に興味ある体験を紹介しておきたい。

彼女は英語を身に付けたくて、メイドとして米軍関係者宅で働くことになって、住み込みを始めて早くも翌朝、見出しに掲げた英文を言われたが、失敗をしてしまったとか。

a basin of water を直訳的に「洗面器一杯の水」と取ったので、洗面器に一杯「水」を入れて、ご主人の所に持って行ったら、「私が髭を剃るのにwaterが必要だと言ったら、その場合のwaterは hot water に決まっているのに、それが分からないとは!」と言われてしまったのである。
(続き)