53.2 いくつかの店舗名を観察する(2)


(b)「クリーニング店」に当たる英語は


この表題のように問われて、何でそんな簡単なことが、と思った人は、私に言わせれば自信過剰である。英語を勉強する(あるいは研究する)人は、謙虚でなければいけない。外国語は、そのネイティブ・スピーカーではない私達には、いつまでも怖い存在である(もちろん、そんなことは気にせずに、適当な知識を駆使してどんどん使ってみることである、という立場もある。それはそれで一つのあり方ではあるが、本連続講義の目的は、そういうことではない)。


簡単なことだ、と思い込んでいる人は、cleaning shop と直せばすむことだ、と言うであろうが、私の現地体験では、cleaning shop なり store は選択屋ではない。以下、私の体験を順を追って述べる。


英米の「クリーニング店」の店頭には、以下のように出ている。


(1) Laundry and Dry-cleaning

(2) Launder and Dry-cleaner


laundryは、動詞landerから派生したもので、launderは語源的にはラテン語のlavare(=wash)から古期フランス語を経て英語に入ったもの、つまり「水洗い」のこと。


cleaningは、動詞 clean(形容詞でもある)の ing形で、<汚れの無い状態にする>ということ。必ずしも水を使って汚れを落とすとは限らない。水を使わずに汚れを落とす技術が dry-cleanすることである。


上の(1)と(2)とでは、いずれもきちんとした英語であるが、どちらが日本語と比べてより英語らしい表現であるかと言えば、(2)のほうである。それは(2)のほうが、私のいわゆる「パーソン型表現」だからである。


[付] cleaningと称する店は何を売っているか


中学2年次あたりで、clean your room などという英語を習うはずであるが、ロンドンのある通りに、ただ「cleaning」と掲示してある店があったので、改めてその店内をよく見てみると、そこには電器掃除機(vacuum cleaner)がいくつか並べてあったのである。cleaningではなく、cleaners と出してもよかったのではないか。