(1)slippers
「スリッパ」というものは、もちろん英米から渡来したものであるが、私の教えた大学生たち(帰国生を除いて)に、「欧米の普通の家では、スリッパ(slippers)が置いてあるとすれば、家の中のどこにあるか、と訊いてみると、その答えがふるっている。「玄関のドア(front door)をあけて入ったところにそろえておいてあるのではないですか?」と言うのである。これはまさに日本の家の玄関の状況のことである。
その時の学生と私とのやり取りを再現してみる。
O:なぜ玄関のドアを入ったところに置いてあると思うのですか?」
S:外から帰って来て、まず靴を脱いで。スリッパに履き替えるのでしょう。
O:欧米の人は、帰宅したら、多くの家庭では靴のままいえにあがるでしょう。この「家の中にあがる」とくのも日本的で、欧米では、玄関の内部に段差などないし、front doorの底辺と同じレベルで、そこから板の間なり、carpetが敷かれていますから、「あがる」感じは無いでしょう。
S:そうでしたね。では、靴はどこで脱ぐのでしょう?
O:自分の個室(bedroom)まで行って、そこで脱いで、スリッパに履き替えるか、あるいは一日中履きっぱなしの人もいます。またこのごろは、家を裸足で動き回っている人もいます。とにかく、slippers は bedroom との連想があるようです。