学生のころ、おれの大先輩にあたる人に連れられて、浅草にあるお好み焼き屋の『染太郎』へ行ったことがある。その頃おれはまだ青々とした学生だったから、大先輩に言われるままにただついて行った。今は経営者が代わり、詰まらん店になってしまったが、当時はそこに芸者あがりのお婆さんが切り盛りしていた。すでに体調が悪く奥でゴロッと横になることもあったようだ。俺が手洗いにそこを通ったとき、『あら、こんなところ、若い人に見られちゃって…』と言って、きものの裾を直ぐに直してるところがなんとも艶っぽかった。しかし、このお婆さん、自分の気に食わない客は追い返すそうで、なんとも、今にない、いい店だった。勿論そこは文士仲間の溜まり場で色々な作家が集ったそうだ。面白いのが、坂口安吾が酔って、お好み焼きの鉄板の上に手を置いてしまった。だけどこのお婆さんが懸命に手当てをしてくれて、火傷をしなかったそうだ。感激した安吾は色紙に『鉄板の上に手を置いたが火傷をしなかった』と書き残した。そんないいお婆さんなのだ。しかし、これを見た実存主義者、矢内原伊作さんは、すかさず「鉄板の上に手を置かなかったが、火傷をした」と言ったとか言わなかったとか…
ても、そんないい店が浅草にあり、その雰囲気をじかに楽しめたことはなんともラッキーなことと思っている。(^-^)
ても、そんないい店が浅草にあり、その雰囲気をじかに楽しめたことはなんともラッキーなことと思っている。(^-^)