小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』 | 文学どうでしょう

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猫を抱いて象と泳ぐ/小川 洋子

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小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』(文芸春秋)を読みました。

これもピグの茶屋ですすめられた本。小川洋子の名前はよくあがっていて、『博士の愛した数式』(新潮社)は読んでいるので、その辺りかなあと思っていると、みんな「猫がいいです」と言うんですね。「猫と象のなんとか」と。

正直、チェスの話は興味がないし、どうせ小難しい話だろうと敬遠していたんですが、読んでみてびっくりしました。面白いですこれ。みんながすすめるのもなるほどです。

リトル・アリョーヒンの話です。リトル・アリョーヒンがリトル・アリョーヒンになる話。

アリョーヒン(ウィキペディアでは、アレクサンドル・アレヒン)という、実際にいたチェスの選手がモチーフになっているようですが、主人公の少年が、アリョーヒンの姿をした人形を使ってチェスをして、そこからリトル・アリョーヒンと呼ばれるようになるわけです。

まず、なんといっても文章が魅力的ですね。読むかどうか迷っているひとは、最初の方だけでも読んでみてください。象の話、ミイラの話、とても印象的です。

少年は口がぴったり閉じて生まれ、チェスをする時に、盤の下にいないとできないなど、ちょっと変わったところがあり、表舞台に出れないんです。

それで地下の暗黒チェス場みたいなところで、人形を使ってチェスをすることになります。

それからまあ色々あって、あれがこうして、こうなるんですが、全体を通しての文章の巧みさというか、抒情あふれる描写というか、すごく引き込まされる作品ですね。傑作だと思います。

チェスの話が出てくるたびに、ピグのしろくろを連想していたことはナイショです。