日本には「音楽の要素を取り入れた教育や教室」がけっこうあります。
「リトミック」
「音楽療育」
「絶対音感」…など
これらの教育にもきっと素晴らしい点があるとは思うのですが、情報があふれる現代では、誤解や期待しすぎてしまう、ということが少なくありません。
これらの類の音楽的教育は、それぞれに何らかの主となる目的があって、その目的のために音楽という要素を使っている、ということになります。その主となる目的を身に付けたいのであれば問題無いのですが、間違えてはいけないのは、それをやることによって音楽的能力そのものは上がらない、ということです。
「リトミック」
音楽を使ってリズム感や表現力を育むもの。しかし、それをたくさん行ったからといって、音楽的能力そのものが劇的に向上するわけではありません。リトミックの主な目的は、音楽を楽しみ、リズムや音楽との親しみを深めること。リトミックそのものが音楽的技術を向上させるものではない、という点を理解しておくことが大切です。私は、1才から3才までのお子さんにはとても向いていて、3才以降にピアノや他の楽器を始める際の良い準備になると考えています。
「音楽療育」
音楽療育も幅広い意味を持ちますが、一般的にこの言葉を使う幼児や子供の教室では、子供の「感性」や「表現力」を育てることを目的としているようです。この主となる目的の効果はさておき、その目的のために音楽的要素を使っているということであって、音楽療育と名の付く教室で学ぶことが音楽的能力そのものを直接向上させることはほぼ無いでしょう。
「絶対音感」
絶対音感というと、まるで超能力のような特殊な能力に思えるかもしれませんが、子供が音楽や楽器を学ぶ上で、絶対音感を意識する必要は全くありません。楽器を弾いたり音楽を楽しむ上での重要度は非常に低いもので、経験や実績のある先生であれば、この能力に過度にこだわる必要はないと当たり前に知っています。もし絶対音感にこだわる教室や先生がいる場合、それはまだ経験不足の先生か、方向がよく分かっていない先生か、そもそも教える能力が無いか、かもしれないので少し注意が必要です。音楽を学ぶ中で絶対音感は目的ではなく、むしろ一部の副産物に過ぎないということを知っておきましょう。たとえ(親が)プロを目指させたいのだとしても同じです。
これらの教育もビジネスですから、宣伝広告の表現は過大になりがちです。それを見て全て身に付くみたいな印象を持つかもしれませんが、音楽的能力はそんな簡単に身に付くものではありません(だからこそ価値がある)。
「楽器を習う」ことの圧倒的な効果
実際、音楽的能力や感性を育てる最短の道は、「楽器を習う」ことです。楽器を習うことで、音楽を楽しみ、楽器を弾けるようになるだけでなく、リズム感、音感、知能、表現力、そして自信だって、数多くの能力が自然と身についていきます。音楽を通して育まれるこれらの力は、生涯にわたって役立つものです。
親御さんに伝えたいこと。
お子さんの教育にとって、時間を有効に、ムダなく使うのはもっとも大事なことのひとつです。ですから、確実に能力を上げられる、目的に合わせた習い事をしっかり選んであげて下さい。余った時間で遊ぶこともとても大切なことですので。
音楽的能力を本気で身につけたいのであれば、楽器を習うこと以外に選択肢はありません。そして(例えば)音感を鍛えたいなどの希望があれば、レッスン時間の設定を増やせば(うちの教室であれば15分で十分)それで素晴らしい効果を発揮するでしょう。
音楽教育は多種多様ですが、お子さんが楽しみながら学び、成長できる環境を見つけてあげてください。音楽が人生を豊かにする素晴らしい力を持っていることを信じて、ぜひお子さんと音楽の世界を楽しんでください!