今日のルイージ指揮・N響サントリー定期は、後半の「イタリア」に期待していたのですが、見事に裏切られました。ルイージ指揮もので、最近は裏切られることが多くなりました。
1曲目の武満「3つの映画音楽」は武満の曲では最も聴きやすい音楽です。〈1.訓練と休息の音楽〉はジャズ・テイストの曲で、N響のノリが良く、旋律も美しかったです。〈2.葬送の音楽〉は優しく暗いサウンドで、後半にかけては重みのある音楽になっていました。〈3.ワルツ〉は昨年末の井上通義さんのラストコンサートのアンコールの最後に取り上げられた曲ですが、旋律美は井上の演奏の方が良かったです、今日はやや硬いワルツでした。前半2曲目はベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」はドゥエニャスのソロですが、カデンツァは自作のカデンツァと言うことなので、この点が注目点です。第1楽章のオケの序奏は重厚感のないライトな演奏で、ソロもモーツァルトのような表層的で優雅な演奏で、冒頭から期待感の薄れるものでした。その後のオケの伴奏もベートーヴェンらしい重厚さ・田舎さ・土臭さなど完全に削がれていて、ひたすら大人しめに優雅に演奏しているイメージです。ドゥエニャスの自作のカデンツァは一転して、力強く味わい深い演奏で、これまでおなしく演奏していたのは、ルイージの指示なのでしょうか。第2楽章は美しい弦楽の演奏の後は、Hrn(2名)が滑ってしまい、ここは残念でした。Vnソロは美しい旋律を弾いていますが、線が細い演奏になっていました。第3楽章は、先週の「皇帝」に続けてアコーギクのないスケール感の小さな演奏で、こじんまりしている点が説得力をかけます。テンポ感があまりなく、一言で言うと面白くない演奏が続きます。しかし、第3楽章の自作カデンツァでは鋭い入りで、音を揺らしながら、ロマンチックな音楽でした。アンコールは先週に続いてありませんでした(アンコール無しでも構いませんが、心にしみる演奏をお願いしたいです)。
後半はメンデルスゾーン「交響曲第4番〈イタリア〉」は、冒頭から猛スピードで弦楽の縦線が合っていません。ただテンポが速い演奏で、何を表現しているのか、全く分からないです。このような壮絶なハイテンポの「イタリア」は珍しいです。旋律の美しさやテーマが分からないままで、イタリアの高速鉄道「イタロ」でも表現しているのでしょうか(^^)
第2楽章でも攻めの音楽で、ルイージが何を表現したいのかさっぱり分からないまま終わりました。第3楽章の美しいメヌエットはやっと本来のこの交響曲の良さが出ていたと思います。しかし、Hrnの濁った音が演奏を邪魔していました。第4楽章も予想の範囲内でしたが、ハイテンポの展開で、弦楽は必死に演奏をしていますが、ここまでテンポが早いと雑音的な音楽になってしまいました。満足度はかなり低く、ブラボーはかなり少な目、後から友人から聞いたら、かろうじての若干のソロ・カーテンコールがあったそうです。この2週間のルイージ・N響定期で言えることは、ルイージはシンフォニー指揮者・コンチェルト指揮者でもなく、あえて言うとオペラ指揮者で、N響の首席指揮者には相応しくないと思いました。ちなみに、ルイージは「イタリア」を滅多に指揮をしていないと書いてます↓。冒頭にここまで強く書いてあると「イタリア」の指揮は得意ではないと察します。
ここで筆者は自省しておく必要があります。昨年、N響の今シーズンのおすすめ公演にルイージ指揮を3公演入れてましたが、先週の公演はブロンフマン狙いで、彼が不調でした。今後は12月Bプロは「オルガン付」が大好きな曲なので選んでます。また、12月Cプロは今年のショパコンの優勝者が来日するのが魅力なので、おすすめリストに入れてますが、ルイージ公演は今後はなるべく避けるようにしようと思います。
ルイージがドレスデン時代のブル9(4月)、マーラー5(4月)はあまり良くなかった記憶があり、これらはパスしようと思っております。
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*勝手ながら5段階評価でレビューしております
★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演
★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象
★★★: 満足、行って良かった公演
★★: 不満足、行かなければ良かった公演
★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演
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(★五つ星は年間10回以内に制限しております)
指揮 : ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン : マリア・ドゥエニャス
- 曲目
- 武満 徹/3つの映画音楽
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
メンデルスゾーン/交響曲 第4番 イ長調 作品90 「イタリア」




