僕にとってのリアルタイムのスプリングスティーンのアルバムは1982年リリースの「ネブラスカ」。


「ザ・リバー」でアメリカンロックの顔役になったスプリングスティーンは次にどんなアルバムをリリースするのか待ち望まれていたのだが、出てきたものはなんとEストリートバンドを一切起用しない、自宅での弾き語りによる4トラックの宅録という地味なアルバムだった。


故にサウンドは極めてシンプルで、歌詞は救い様の無い人生を歩んだ人間たちの物語が淡々と語られる、極めて異色のアルバムとなった。何故ならスプリングスティーンのロックンロールアルバムには常に救いが存在していたから。


僕はこのレコードを手に入れてからスプリングスティーンの真意を探そうと、来る日も来る日も必死になってターンテーブルに乗せて聴いた。





でも僕は結局最後までスプリングスティーンのこのレコードを制作した意図が分からなかった。前作で自身の肥大化したロックンロールスターとしてのイメージを一度リセットしたかったとしても、このアルバムで描かれる世界観は僕には理解不能だったのだ。


それは41年経った今でも変わらず同じままなのだ。