ドラッグストアをなんとなく流し見していたとき、目に飛び込んできた言葉がある。

低温うるみピンク

 

— キスミー フェルム デューイーピンク —

……待って。「低温うるみピンク」って何? 低温って何が低温なの?でも、なんかわかる。なんかすごくわかる気がするんだけど、なんで?

 

 

 

その日、棚の前でしばらく動けなかった。美容部員として何年もコスメと向き合ってきたけど、パッケージの言葉でここまで「撃ち抜かれた」感覚は久しぶりだった。


「低温うるみピンク」って、天才の発明だと思う

少し考えてみた。「低温」って何を指しているんだろう。

熱量が低い、ということなのかな。彩度が高くてぐわっと主張するピンクじゃなくて、もっと静かで、落ちついていて、でもちゃんとピンク。体温よりも少し低い、みたいな温度感。燃えてないんだけど、消えてもいない。そういう色。

体温よりちょっと低い、みたいなピンクってどういう色だろう——と想像したら、もうその色が見たくてたまらなくなった。

それに「うるみ」が合わさるんですよ。うるみって、水分とか、潤い、とか、ちょっと泣きそうな目、みたいなイメージがある言葉で。低温+うるみって、ようするに「熱くもなく冷たくもなく、でもどこか感情があふれそうな」みたいな状態じゃないですか。

そこにピンク、ときた。

これはコピーライターが天才だと思う。商品名じゃなくて、ひとつの詩みたいになってる。


バレエコアとこの色の話

最近ずっとバレエコアが気になっていた。チュール、淡いピンク、細いゴールド、くすみ、儚さ。華やかさじゃなくて「消えてしまいそうなもの」への憧れ、みたいなムードがあって。

バレエコアのリップって探すとなかなか難しくて。ベビーピンクだと幼くなりすぎるし、ローズだと重くなるし、ヌードだとなんか違う。あのトウシューズの、長年使い込まれてくすんだサーモンピンク、みたいな色が欲しいんだけど、なかなかない。

理想のバレエコアリップのイメージ

トウシューズの、くすんだくすんだサーモンピンク。透けるような薄さなのに、ちゃんと色がある。濡れているけど、熱くはない。そういう色。

デューイーピンク、それだった。

塗ってみたときの第一印象が「あ、これ、バレリーナがすっぴんで稽古してるときの唇の色だ」って思ったくらい。自然なんだけど自然じゃない、素肌っぽいんだけど確実に何かつけている、という絶妙なライン。


元美容部員として、正直に伝えるとしたら

感情で語ってばかりだと怒られそうなので(笑)、ちゃんと見てきたことも書きます。

発色について

薄づきだけど、ちゃんと「ピンク」に寄る。唇の色が透けるタイプなので、もとの唇の色が濃い方はライナーで整えてから重ねると◎。元美容部員的に言うと「血色リップ」に近い仕上がりで、すっぴんにのせても浮かない。

うるみ感について

「うるみ」の名前に偽りなし。グロスとリップの間みたいなテクスチャーで、ぺたっとせずにふわっとのる。時間が経ってもぱさつきにくいので、子育て中で化粧直しがままならない日でも安心感がある。

こんな人に刺さると思う

ガーリーすぎず、かといって無機質にもなりたくない。女性らしさを「主張」じゃなくて「余韻」にしたい人。ベージュ系に飽きてきたけど、ローズやレッドに振り切る気分でもない時期の人。


33歳、ふたりの子どもの母で、元美容部員の私が今欲しかったリップ

正直に言うと、最近のメイクって「疲れて見えないこと」「若く見えること」みたいな目標に引っ張られてしまっていた。

でもこのリップを塗ったとき思ったのは、そういうことじゃなかった。「きれいになりたい」でもなくて、「こういう空気をまとっていたい」という感覚。バレエの稽古場の、朝の光が差し込んでくるあの空気みたいな。儚くて、でも芯がある、みたいな。

リップひとつで気分が変わる、っていうのを久しぶりに思い出させてもらった気がした。

プチプラでここまで語らせるキスミー、やるなあと思う。「低温うるみピンク」というたった7文字に、ちゃんと世界観があった。

ドラッグストアで見かけたら、ぜひ一度手にとってみてください。棚の前でしばらく動けなくなると思うから。