ひとり親家庭の生活苦 | 考えてみよう

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「貧困」

発展途上国の遠い話のように思えるかもしれませんが、わが国日本でも、貧困の状態にある家庭は存在します。

しかもその数は、私たちの想像をはるかに超えるほど、多かったのです。

今回は厚生労働省の貧困率調査から、ひとり親の抱える生活苦の問題を考えてみます。


■主要国で2番目の格差社会

厚生労働省は2009年10月20日、初となる「相対的貧困率」を公表しました。

これはOECD(経済協力開発機構)が発表しているものと同様の計算方式で算出され、等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合を示しています。(「等価」とは、世帯人数の影響を修正する係数のこと、「可処分所得」とは、所得から所得税、住民税、社会保険料、固定資産税を差し引いたものです)

これによると、貧困世帯の割合は15.7%、17歳以下の子どもは14.2%でした。7人に一人は、貧困状態にあるのです。

今回の公表にあたっては、2006年から3年ごとにさかのぼり、4回分を算出しました。今回の結果は、4回のうち、最も高い数値で、格差が広がっていることが分かります。


厚生労働省「相対的貧困率の公表について」はこちらです

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/h1020-3.html


では、日本の貧困率は、世界と比較するとどのような位置づけにあるのでしょうか。

OECDが調査した、2000年時点の相対的貧困率の国際比較によると、日本は13.5%で、アメリカについで、主要国では2番目に高い数値となっています。ちなみにOECD諸国平均は10.2%。日本は、主要国の中で2番目に、「所得格差の大きい国」なのです。


OECD「相対的貧困率の国際比較」はこちらです

http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/koyou/hiseikiroudou/data/01gaikyou_05.html


■ひとり親家庭の貧困率は54.3%

その後厚生労働省では、子育て世帯に対象を絞った結果を公表しました。

これによると、子どもがいる現役世代の相対的貧困率は12.2%。ところが、父親もしくは母親のみの、ひとり親家庭の貧困率は、なんと54.3%だったのです。これは、1997年の63.1%と比較して8.8ポイント減少しているとはいえ、依然半数以上が相対的貧困にあります。

2000年代半ばのOECDの調査では、日本は58.7%と、圧倒的に最悪の数値です。2位のアメリカは47.5%で11.2ポイントの差があり、OECD平均の30.8%とは、27.9ポイントのひらきがあります。


厚生労働省「子どもがいる現役世帯の世帯員の相対的貧困率の公表について」はこちらです

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000002icn.html


■相対的貧困の原因は社会政策

相対的貧困の原因は、いくつかあります。


1.所得再配分

お金をたくさん稼いだ人から稼げなかった人への、所得移転がうまくいっていないため、格差が広がっています。


2.税金

お金をたくさん稼いだ人には多く課税し、稼げなかった人への課税を減らす仕組みがうまくいっていないため、格差がひろがっています。


3.賃金

日本では「同一価値労働・同一賃金」になっていないため、様々なところに所得格差が見られます。

例えば派遣社員やパート・アルバイト社員が、正社員と同じ仕事をしても、正社員と同等の給与は得られません。2008年の「賃金構造基本統計調査」によると、正社員・正職員の賃金は、男性が345.3千円、女性が243.9千円ですが、正社員・正職員以外は、男性が224.0千円、女性は170.5千円です。正社員・正職員の賃金を100とすると、正社員・正職員以外の賃金は、男性が65、女性は70にすぎません。

また日本では男女の賃金格差が大きいです。同調査によると、一般労働者の賃金は、男性が333.7千円、女性が226.1千円で、男性を100すると、女性は68にすぎません。


「平成20年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」はこちらです

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2008/index.html


今回ひとり親世帯の貧困率が高かった背景には、ひとり親世帯の世帯主の大半が女性であることが挙げられます。「平成20年国民生活基礎調査」によると、ひとり親世帯のうち、母子世帯は701千世帯、父子世帯は94千世帯と、88.2%の世帯主が女性です。


「平成20年国民生活基礎調査の概況」はこちらです

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa08/index.html


■適切な施策が相対的貧困を減らす

「所得再配分」「税金」「賃金」といったものは、すべて国、自治体、企業によって定められたものです。国民一人ひとりの努力で変えるには、限界があります。

民主党は、「所得再配分」と「税金」については、納税額から一定額を差し引く税額控除による減税と、所得が課税最低限に達しない人たちへの給付金による支援を組み合わせた「給付付き税額控除」を検討しています。また「賃金」ならびに「ひとり親」に対しては、2009年4月に廃止された「母子加算」(生活保護を受けている、父子家庭を含むひとり親世帯に支給されていた加算)の復活や、「子ども手当」の導入を目指しています。

施策がこれ以上相対的貧困を広げることのないよう、適切な対応が望まれます。