1985年に男女雇用機会均等法が施行されてから約四半世紀。これまで男性でなければ働くことが難しかった業界でも、女性が働くことができるようになり、その数は徐々に増えつつあります。
そんな業界の1つが鉄道です。最近では鉄道好きな女性を「鉄子」と呼ぶ等、女性の趣味としても、ちょっとしたブームにもなっています。
『週刊東洋経済』2009年7月4日号では、「鉄道進化論」として、鉄道ビジネスを特集しています。
今回はその記事の中から、鉄道業界で活躍する女性を取り上げ、男社会に女性が存在する意義を、考えてみたいと思います。
■華麗なブレーキ操作で安心感と快適な乗り心地
1999年の男女雇用機会均等法改正により、女性の深夜業務が解禁となりました。そこで鉄道各社では、女性の運転士など乗務員への配置が可能となりました。
京王電鉄では2004年に女性運転士第一号が誕生。現在9人が常務しています。
その中の1人である我妻亜紗季氏は、運転士暦2年。「女性で大丈夫か」という乗客からの視線もありますが、実は女性のほうが安全への感覚は鋭いと感じているそうです。たとえば「ブレーキ」。満員電車ではわずかのブレーキのかけ具合で、衝撃が大きく違います。このためラッシュ時には、早めに少しずつブレーキをかけ始めます。女性はこれが男性以上にきめ細かくなるそう。「背中で安全運転をアピールする」技術も身に付け、日々、目的地まで、安全運転でお客様を運んでいます。
誰もが一度は憧れるであろう新幹線の運転士。JR東海では、現在31人の女性運転士が活躍しています。江村希氏は2005年に運転士になり、現在は車掌長も務める列車長。予定と実際の運転とのずれを1秒以内に収めることを目標としており、「几帳面な女性の特性が生かせる仕事」と考えています。
■女性も学ぶ鉄道学校
日本には鉄道の専門授業を教える高校が2つあります。このうち昭和鉄道高等学校は、2004年度に共学化。現3年次には7名の女子生徒がおり、技術系の運輸システムでも、2名の女子生徒が学んでいます。
学校長である北山雅人氏は「女子生徒をいかに増やすかが課題の1つ」と語ります。学校案内のパンフレットにも女子生徒を多く登場させ、未来の「鉄道ウーマン」集めに力を入れています。
■女性の声を取り入れたデザインが好評
女性が活躍しているのは乗務員だけではありません。
鉄道ファンの全国組織「鉄道友の会」が、性能やデザインなどで優れた車両に送る「ローレル賞」。今年は京阪電気鉄道が中ノ島線開通に伴い投入した新型車両「3000系」が選ばれました。デザイン開発にあたっては、初めて外部デザイン会社を採用するとともに、女性顧客の意見を取り入れる協業型マーケティングを展開しました。月をイメージした円弧のデザインや、車内になめし革調のシートを1列+2列で配列するなどの独自性が評価されました。
女性の声を取り入れた車両の先輩としては、2008年4月にお目見えした西武新宿・池袋線の30000系が話題です。通称「スマイルトレイン」と呼ばれるこの車両は、正面から見ると子どもが口を開けて笑っているように見えます。内部も、天井をドーム型にすることで圧迫感を減らし、吊り手にはつかみやすいたまご型を採用。荷台を低くするなどの工夫も施されています。車両開発には同社の女性10人が参加。これほど大人数の女性が参加した例は、他社でもあまりないそうです。
■今後求められるものに対応できるのは女性
明治学院大学教授で、「鉄道教授」とも呼ばれている原武史氏は、「今後鉄道会社に求められているもの」として、「高速化が進む中での逆の発想」つまり「あえてスピードを遅くする」ことを挙げています。ゆっくりと景色を楽しむなど、旅行の幅を増やすことにもつながります。
「そういった意味でも女性の登用を増やすべき」というのが原氏の主張です。ダイヤ編成や車両開発などに、女性の意見を積極的に取り入れるべきだ、と述べています。
鉄道のお客様は男性だけではありません。性別、年齢、国籍など、あらゆるジャンルに所属する人が利用する公共機関です。だからこそ、働く側にも、男性以外が活躍することが必要なのですね。
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