世界的な経済不況で始まった2009年。
そんな状況を変える人材として期待されているのが、女性の最高責任者(CEO)です。
■アメリカの女性CEOが過去最高に
アメリカでは、売上高上位500社のうち、女性CEOが13人と、過去最高となりました。
役員に占める女性の割合も、1995年には10%に満たなかったものが、2008年には15%まで増加しています。初の女性CEOが誕生した企業もあり、大手企業の間では、女性CEOへの期待が高まっています。
■老舗初の女性CEO
創業206年という歴史を持つデュポン。19人目となるCEOは、初の女性となりました。エレン・クルマン氏は、1988年にゼネラル・エレクトリック社(GE)から転身。石油化学製品主体の会社を、バイオ技術や代替燃料なども手掛ける、市場重視型のサイエンスカンパニーへと導きました。自身が立ち上げた新事業である「安全対策」(防弾チョッキの材料となる特殊繊維など)は、今では売上高の2割を占める事業の柱まで成長しました。化学企業の女性トップはほとんどおらず、しかも老舗であるデュポンが女性をトップに据えたということで、業界全体に風穴を開ける役割も、期待されています。
■あのヤフーでも
日本国内では検索サイトNo1の地位を誇る「ヤフー」。しかし世界に目を転じれば、経営状態の悪化による買収騒動など、難しい舵取りを迫られています。そんなヤフーの新しいCEOとして迎え入れられたのは、キャロル・バーツ氏。バーツ氏は、設計ソフト会社であるAutodeskでCEOと会長職を務めた他、Sun Microsystems、Digital Equipment Corporation(DEC)、3Mにも務めたことがあるIT業界のベテラン。過去の卓越した経営手腕が認められ、先見性のあるリーダーとしての活躍が期待されています。
■引き続きCEOを担う女性も負けていない
新しく就任した人物に目が向きがちですが、これまでの実績が評価され、引き続きCEOを担う女性も多くいます。
「ペプシ」や「トロピカーナ」でおなじみのペプシコ。2006年10月から、同社初の女性トップとなったインドラ・ニューイ氏が、舵を取っています。2001年に最高財務責任者に就任。炭酸飲料以外の分野に進出し、幅広いブランドを持つ食品グループに育て上げた功績が評価され、50歳の若さでCEOとなりました。2008年8月に米経済誌「フォーブス」が発表した「世界で最も影響力のある女性100人」では、ドイツのメルケル首相、米連邦預金保険公社(FDIC)のベア会長に続き、3位に選ばれています。
アン・マルケーヒー氏は2001年に、事務機器大手であるゼロックスのCEOに就任。経営危機に陥っていた同社を1年で黒字転換します。経営改革の根幹は「自己否定」。なんと、コピー機器を販売する企業自らが、無駄なコピー機を排除し、コストを削減するサービス事業を発足します。これが、同時多発テロの影響で景気が低迷していた企業に歓迎され、今では機器販売を上回る売上規模を誇ります。2009年からのオバマ新政権では、経営顧問チームにも参画します。
■「女性だから」ではなく「実績があるから」
ここに挙げた女性CEOは、誰もが認める素晴らしい実績を上げたことが評価され、CEOに就任しています。つまりCEOになった理由は「女性だから」ではなく、「CEOとしてふさわしい実績があるから」です。性別を問わず、実力のある人物がトップになる。これがアメリカです。
翻って日本ではどうでしょうか。「女性活躍推進」と銘打ち、各企業で様々な取り組みが進んでいます。しかし、場合によっては、それが「女性登用に関する数値目標達成のみを目的とした昇格」や、「広告塔・飾りとしての登用」になっていないでしょうか。
実力を伴わない安易な昇格や登用は、男性社員との軋轢を生み出したり、本当に実力のある女性への評価が曖昧になるなど、かえって会社全体のモチベーションを下げる原因となることもあります。また本人、そして女性に対する、ある意味での差別にもなると感じませんか?
不当な扱いを受けてきた人々への機会保障としての「アファーマティブ・アクション」(積極的優遇制度)は、一定の段階までは効果がありますが、「機会均等」が保障されたのであれば、それ以上は「実力主義」で進めていくことが、男女ともが納得できる「男女平等」につながるのではないでしょうか。
参考:2009年1月15日付「日本経済新聞」
デュポン株式会社様HPはこちらをクリック
http://www2.dupont.com/DuPont_Home/ja_JP/index.html
ヤフー株式会社様HPはこちらをクリック
ペプシコ様HPはこちらをクリック(英語です)
ゼロックス様HPはこちらをクリック(英語です)
http://www.nyse.com/about/listed/lcddata.html?ticker=XRX
日本経済新聞HP「NIKKEI NET」はこちらをクリック