女性研究者がノーベル賞を受賞する日 | 考えてみよう

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【研究職の女性の実態は】

2008年秋は、4人の日本人のノーベル賞受賞に沸きましたね。

小林誠氏、益川敏英氏、南部陽一郎氏が物理学賞を受賞、下村脩氏が化学賞を受賞しました。

ところで、過去のノーベル賞受賞者をさかのぼってみても、日本人の受賞者は男性のみですね。

そもそも理工学系の研究者として取り上げられる方は、多くが男性であるという印象を受けます。

理工学系の学会などが科学分野での男女共同参画を実現するために設立した「男女共同参画学協会連絡会」は、科学技術分野における研究者・技術者が置かれた現状を把握するために、「科学技術系専門職における男女共同参画実態の大規模調査」を実施しました。

そこでは、女性研究者を取り巻く厳しい環境が明らかとなりました。


【女性研究者は少なく、若い】

まず回答者の年齢分布と女性比率を見てみましょう。

調査に回答したのは、男性が10,349名、女性が3,761名。女性は全体の約4分の1、27.6%でした。そもそも女性の研究者人口自体が少ないことが分かります。

年齢分布を見ると、男性は30代後半の回答者が最も多く全体の17.0%、女性は30代前半で、全体の23.1%を占めました。女性研究者の約4分の1が30代前半であることについては、調査の「はじめに」において、連絡会委員長である美宅成樹氏が「非常に不自然」と指摘しているほど、極めて偏った状況です。これは女性が歳を重ねる毎に、研究者としての職を継続していくことの難しさを示しています。

そこで、「ワーク」と「ライフ」、どのような場面で女性が困難に直面するのかを、見ていきましょう。


【学歴は同じ、でも収入は低い】

まず「ワーク」では、男女の賃金格差が明らかになりました。

最終学歴を調べたところ、男女差はほとんどありませんでした。

年齢別で見ると、50代以上では女性の博士取得率が、男性を上回っています。これは、この年代の女性が研究を続けるためには、学位取得が重要であったことが考えられます。

しかし雇用形態を見ると、常勤(期限無し)は男性が63.1%であるのに対して女性は43.4%。常勤(期限付き)ならびに非常勤は、男性がそれぞれ17.7%、5.3%であるのに対し、女性は22.0%、13.0%と、不安定な雇用になるほど女性比率が高まっていくことが分かります。

これに伴い、収入の全体平均は、男性を100とすると女性は約80%にとどまります。25歳から64歳まで、企業の研究機関で仕事を続けた場合の合計年収の平均は、男性332百万円、女性274百万円と、男女差が顕著となっています。


【子どもを授かれない、育児休暇が取れない】

それでは「ライフ」は、どうなっているのでしょうか。ここでは、特に女性のキャリアに大きな影響を及ぼす「出産」の状況を見てみましょう。

配偶者を持つ回答者に子どもの人数を聞いたところ、男性は半数以上に子どもがいます。その数は2人がもっとも多く、全体の25.8%を占めました。一方女性は65.6%と、約3分の2に子どもがいませんでした。子どもがいる場合でも、1人がもっとも多く、16.5%を占めました。

一方で生涯に持つ理想の子どもの数をきいたところ、男女とも2人がもっとも多く、半数を超えています。理想の子どもの数を実現できない理由として最も多いのは、男性が「経済的理由」で50.4%、女性は「育児とキャリア形成の両立」で、74.4%でした。

また実際子どものいる研究者に、育児休業の取得状況を尋ねたところ、「休業しなかった」と回答したのは男性の92.8%、そして女性も、半数を超える51.9%が、休業していなかったのです。

さらに男性の8.5%、女性の20.47%が、育児休業後、「昇給・昇進が遅れた」と回答しました。

「子どもを授かることはワークスタイルに支障をきたす。だから諦めざるをえない。」という切ない叫びが聞こえてきます。


【男性の意識改革が、研究と子育ての両立を可能にする】

女性にとって厳しい現実ばかりが明らかとなりましたが、今後への希望もありました。

それは「男女共同参画推進に必要なこと」。回答のトップとなった項目は、男女とも「男性の意識改革」。女性の68.4%が回答しただけでなく、男性の56.7%も、この項目を選択しています。つまり、男性自身が、「自分の意識を改革しなければならない」という自覚を持っているのです。


研究者たちは、未知の分野を開拓し、私たちの生活を革新するという、素晴らしい仕事に取り組んでいます。そして生活の場で研究の恩恵を受ける私たちは・・・男女半々なのです。人類全体の発展を実現する研究を進めていくためには、男女双方の観点が必要ですよね。

性別を問わず、すべての研究者が、仕事と生活のバランスをとれるようになれば、研究者人口が増え、多くの研究成果が報告されることでしょう。女性研究者のノーベル賞受賞も、決して夢ではないはずです。



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男女共同参画学協会連絡会が実施した「平成19年度科学技術系専門職における男女共同参画実態の大規模調査」はこちらをクリック

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