この子、どこの子? | 考えてみよう

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■あなたは誰の子どもですか?
■あなたはどこの国の子どもですか?

この問いに簡単に答えられない子どもがいます。
外国ではなく、日本の子どもの話です。


【代理母を依頼後、離婚】
2008年7月、日本人の父親が、インドで生まれた自分の娘を引き取れない事態が発生しました。
ある日本人夫婦の夫が、自分の精子とインド人女性の卵子を体外受精しました。その受精卵をインド人女性に依頼し、代理出産で赤ちゃんを授かりました。ところがこの男性は、代理出産依頼後、子どもの出生前に妻と離婚していました。赤ちゃんが生まれたときには、元妻の女性は赤ちゃんを望んでおらず、父親には子どもとの関係を証明できるものがありませんでした。
インドには代理出産に関する法律が存在していません。父親の日本人男性が子どもを引き取るためには、養子縁組みの必要がありますが、インドの法律では、妻のいない男性が女児を養子とすることを禁じています。
現在赤ちゃんはインド国籍となっています。出生証明書は発行され、父親欄には、日本人男性の名が記載されていますが、2008年8月現在、査証(ビザ)は発行されておらず、赤ちゃんは日本に入国できない状況が続いています。


【日本人男性と外国人女性が婚姻せず、出産】
2008年6月、最高裁で、入籍していない日本人男性と外国人女性との間に生まれた子どもを、男性が出生後に認知した場合でも、日本国籍を取得できるという判決が下されました。
この裁判では、婚姻の事実がない日本人の父とフィリピン人の母から生まれた子ども10人全員に、日本国籍を認め、生まれた後に父から認知されても、両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない現在の国籍法は、憲法14条の「法の下の平等」に反するとの判断を下しました。
この判決を踏まえ、政府は、現行法の改正案を打ち出しました。子どもの日本国籍取得にあたっての父母の婚姻要件を除外、日本人の親に認知されれば日本国籍を取得できる、とする方針を固めました。


【30人に1人は、外国籍の親を持つ子ども】
「人口動態統計」と同「特殊報告」によると、2006年に日本で産まれた赤ちゃんのうち、親の少なくとも一方が外国籍の子は35,651人で、新生児の3.2%、ほぼ30人に1人の割合に上ることが明らかになりました。クラスに1人は、外国籍の親を持つ子どもがいることになります。肌の色、瞳の色が違う子どもたちが同じ教室で机を並べる風景は、当たり前のものになりつつあります。
一方で、母国語が日本語ではない親の元で生まれた子どもが日本語に不自由し、学校での授業についていかれないという問題も発生しています。外国籍の親を持つ子どもの割合が高い神奈川県横浜市や愛知県西浦町の小学校では、子どもたちが日本語や日本の生活習慣を学べる取り組みを行っています。


【子どもの権利は大人が守る】
「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」第7条では、子どもが「名前」「国籍」を持つ権利、「親を知り、親に育ててもらう」権利を持つことが定められています。すべての国、そして親には、子どもの権利を守る義務があります。
国の都合で、子どもたちの国籍、戸籍がなくならないように。大人の事情で、子どもたちが差別されないように。
「あなたは誰の子どもですか?」「あなたはどこの国の子どもですか?」と聞かれて困る子どもがいなくなるように、そしてこの問い自体が不要になるように。
子どものダイバーシティを守るのは、私たち大人一人ひとりですね。


判例も出ている裁判所HPはこちらをクリック

厚生労働省「人口動態統計」はこちらをクリック

神奈川県横浜市立いちょう小学校HPはこちらをクリック

愛知県西浦町立石浜西小学校HPはこちらをクリック

国連児童基金(ユニセフ)「子どもの権利条約」はこちらをクリック