後に何も残らず、ただ読んでいる時だけ面白い本はあまり好きではない。
例えばミステリー小説は、読書中はハラハラドキドキで楽しいが、読後特に何も残らないことが多い。
(もちろん中身のあるミステリー小説もたくさんあるが。)
自分は娯楽としての読書よりも、(大袈裟に言うと)生きていくために必要な読書を求めている。
しかし、例外がある。
森見登美彦氏の「夜は短し歩けよ乙女」。
この本は完全に娯楽本。得るものなんて何もない。
とにかくくだらない。
しかし!
この本は「愛させる力」が凄まじいのだ。
おともだちパンチ、偽電気ブラン、詭弁踊り、赤玉ポートワイン、二足歩行ロボットめいたステップ…
とにかく奇妙なものがたくさん出てくる。
そして迷言も多い。
「諸君、異論があるか?あればことごとく却下だ!」
「酒と泪と男と男」
「どっこい生きている」
「なむなむ!」
本書の魅力は何かというと、
例えば店で赤玉ワインを見つけたりすると幸せな気分になったりと、日常で「…ふふ」と微笑してしまう瞬間が増える。
そこではないだろうか。
「粗筋を聞いたら、腹の立つような話が、読んでみると、まことに魅力的なのだ。まさに、そこにこそ、小説の魅力、――いや、この場合は、そんなところは軽々と飛び越えて《魔力》といった方がいい――それが、あるからだ。」
そう、この本にはとんでもない「魔力」が潜んでいるのである。
- 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)/森見 登美彦
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