土曜日の午後。娘が友達の就職祝いだとバタバタと出掛けて行った後、その辺りを片付けながら一休みしようとテレビをつけました。

目に飛び込んできたのは、とても綺麗な布。ほ~と、見とれておりましたら、染織家の志村ふくみさんのお顔が。

NHKで志村ふくみさんを特集した番組の再放送でした。見逃していましたので、途中からでしたが有り難く見させてもらいました。

どれもこれも素晴らしくて、うっとりでしたが、驚いたのは(当たり前なのですが)、一つ一つの全ての染めに意図があって、どれ一つとしてただぼんやり染めてみた、なんてものはないんですよね。

同じくNHKの「プロフェッショナル」で、桜の木から色を貰う時もそうでした。当然ですが、心を込めると口で言うのは簡単でも、実際に行うのは決して生やさしいものではないのだと思い知らされました。

「色には、いのちがある」「色はいのちなのよ」(台詞は正確ではありません。ご容赦下さい。)のくだり…。涙が出てきました。

美しいこの国には、綺麗な色がたくさんあるんですよね。

その色を布に移すのは本当に難しいこと。遙か彼方昔から、幾千の職人さん達が取り組んで来られ、そして今もこうして受け継いでいる方々がいらして。誠に素晴らしいことだと思います。

この秋に、文化勲章を受賞されました。

ご自身で染められた紬の着物をお召しでしたね。あれも素晴らしかった。たおやかで控え目な薄い色目なのに、糸に力があって。本物は違うなあ~と、ただただ溜息をつきながら眺めました。

月刊アレコレ123 
「月刊アレコレ」 123号 2015年10月発行

たまたまなのですが、呉服屋さんから初めて頂いた、「月刊アレコレ」の「新きものの基」のコーナーに草木染めが載っていました。

茜染め 

草木染の5回目は、茜染めでした。ちょうど、志村さんも茜で赤く染めていましたから、イメージしながら見ることが出来ました。

茜はそのまま根が赤いから「赤根・あかね」と言うのは知っていましたが、『西方から渡来したので、草かんむりに西で「茜」の字を当てたとも』 言われているとのこと。一つ利口になりました。

こうやって見てみると、草や木から色を貰って染めて行くというのは、志村さんが言う通り「いのちをもらう」ことなんだと分かります。

桜の木の皮の下にある赤をもらったり、茜の根にある赤を貰ったり、藍でも紅花でも何でも同じですものね。「色はいのち」なんですね。

こういう昔ながらの草木のいのちをもらう染め物、どうかこれからも続いていって欲しいと心から願います。

当然ながら手の掛かる草木染めは高価ですから、私なんぞには手が届きません。セレブ様方にはどうかご購入頂いて、そしてこれからも継続して行けるよう、行政の側からも補助して欲しいですねえ。

ああ、それにしても茜で染めた赤い色の綺麗なこと。眺めているだけで、幸せな気分になれます。草木染めの赤は優しくて柔らかくて良いですねえ~。間違いなく若い女性を綺麗に見せてくれる色です。

もう、赤の時期はとっくの昔に過ぎ去って、着ることはありませんが、それでも心惹かれる色ですね。身につけることはしなくても、目にするだけ手にとるだけで、何だか元気になれる色。不思議です。

その点からも、やっぱり「色はいのち」なんですね。草木染めは無理でも、せめて「色」を丁寧に扱っているものを選びたいですし、色をぞんざいにしないで纏いたいものです。

せっかく、こんなに綺麗な色のある美しい国に生まれたのですから。太古からの導きと働きを忘れずに、着物を愛でて行こうと思います。


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